研究課題/領域番号 |
18K04175
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
肖 業貴 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (50252325)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音声復元 / 骨導音 / 気導音 / マルチチャンネル適応ノイズキャンセラー / 最適化 / 逐次最小二乗アルゴリズム |
研究実績の概要 |
骨導音と気導音を適応ノイズキャンセラー(ANC: Adaptive Noise Canceller)の枠組みに取り入れて音声復元を行う従来の研究では、その有効性が示せたが、復元精度の向上が課題として残されている。本研究では復元精度の向上を目指して、複数の骨導音観測値(参照チャンネル)と複数の気導音観測値(プライマリーチャンネル)の導入と最適化が課題の本丸である。平成30年度では、複数の参照チャンネルの(単純で均一な)導入による精度向上が確認でき、成果発表も行ったが、最適化が課題であった。 令和元年度では、研究計画どおり、様々な視点からマルチ参照チャンネルANCの最適化をまず試みた。従来の適応フィルタに通常の(勾配型)LMSアルゴリズムを適用している。最適化のための拘束条件付き線形結合器に対しては、新たな逐次型最小二乗アルゴリズムを導入し、適用している。従来システムに比べて、計算量の大幅増加を避けつつ、最適化の効果の実現を目指すための策である。実測データへの適用により、提案した最適化手法の有効性を確認できた。特に使用する参照チャンネル数と精度向上との関係を調べた。参照チャンネルを増やすと精度が向上するが、計算コストがかさむ。復元精度が大幅に向上する最小のチャンネル数を探索した。成果のみならず、多くの知見も獲得した。研究成果の発表を行う予定である。また、マルチプライマリーチャンネルも導入したANCによる復元システムの最適化については、新型コロナの影響があったが、何とか計画通りに進行している。シミュレーション実験により、その導入による性能改善がありうることをすでに判明している。 第2年度の取り組みとして、おおむね研究計画通りである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な課題は計画通りに実施し、成果や知見を獲得した。まずマルチ参照チャンネルの最適化の有効性については実測データへの適用により確認できた。また、プライマリーチャンネルANCの適用により、その有効性はまず確認した。そしてその最適化による精度向上がありうる可能性も確認できた。ANCや適応フィルタに関する関連研究も進展し、本研究に活用できる知見も獲得した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の推進方策をを実行する ① マルチプライマリーチャンネルの最適化アルゴリズムを開発し、改良・実行する。これは音声復元システム最適化の最終段階で、復元精度のさらなる向上を実現できるか、粘り強く模索したい。 ② 最適化システムによる復元音声を音声認識エンジンにかけることにより、音声認識レベルにおける復元システムの性能を検証する。それにより、新たな課題や実用化の道筋を見つけたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
① 当初の配分額による、初年度予定の設備が導入できず、今年度の設備導入に合わせ、最終年度のデータ測定・解析に必要な機器等を充実させたいと計画している。 ② RAによる研究補助を継続して研究成果の獲得を目指すため、謝金等の人件費も必要である。
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