研究課題/領域番号 |
18K04176
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
矢口 博之 東北学院大学, 工学部, 教授 (70192383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計測システム |
研究実績の概要 |
検査用アクチュエータシステムに,複数の振動体を搭載すると,合計18本の電線が必要となる.高さが200 m以上の斜張橋の主塔を検査するには,電線の摩擦力などを考慮して約12 N以上の牽引力が要求される.本課題の解決として,実験と数値シミュレーションによる磁場解析を行い,最適な推進部を設計する検討を行った.しかし,リング型永久磁石とボビン鉄心型の電磁石を組み合わせた新たな磁気回路では,振動型アクチュエータの推進特性に大幅な向上が望めなかった.このため,構成する電磁力系の体積を,等倍,2倍,3倍,5倍と増加した磁気アクチュエータを合計4種類試作した.保持力を2.3 Nとした場合,等倍型アクチュエータに150 gの負荷質量を搭載しても,23.9 mm/sの速度で上昇移動可能である.また,100 gの負荷質量を搭載した場合の自走効率は,27.1 %であることが確かめられた.一方,2倍型アクチュエータについては,保持力を11.5 Nとした場合,850 gの負荷質量を搭載しても9.1 mm/sの速度で牽引可能であることが確かめられた.また,アクチュエータの保持力が小の場合は,高速・低推進型の,保持力が大の場合は低速・高推進型の特性を示すことが解明された.更に5倍型のアクチュエータおいて,保持力を46 Nに設定した場合,3500 g (約35 N)の負荷質量を牽引可能であるが,最大効率は2.4 %に留まった.牽引力については,アクチュエータが大型化するにつれて飛躍的に増加するが,逆に最大効率は2次関数的に低下することが明らかにされた. 更に,段差走行用対応のため2枚の鉄製円盤を電磁石の鉄心を軸として結合した磁気車輪型の走行システムを試作し,その走行特性を計測した.得られた成果は,海外雑誌2編,国内発表2件としてまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCDカメラを搭載した電磁アクチュエータシステムで,約 225 m の主塔最上部を検査するには,自動打音装置の質量 260 g ( 約 2.6 N ),全ケーブルの牽引力と各種の摩擦力などを含めると,約 16 N の牽引力が要求される.アクチュエータを構成する電磁力系の体積を相似則を用いて増加させる設計指標が確立された.大型化による保持力増加による摩擦力の増大により,牽引力は増加しても走行速度と最大効率は大幅に低下した.ただし,牽引力については,目標値の2倍以上の値(約35 N)が計測されたことから十分にクリアできたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,360度にわたり全方向にアクチュエータを自在に移動できるように改良しなければならない.本アクチュエータは,振動体を傾けた方向に走行する特徴を有するため,保持部を回転可能な構造を設計する必要がある.複数本の形状記憶合金(SMA)ワイヤーを振動体の支持板に取付け,電流を流してSMAワイヤーを収縮させることで,支持板を傾けて振動体を任意の角度に傾かせる.更にSMAワイヤーへ電流を停止した後は,複数個の永久磁石と鉄材の吸引力により振動体が保持され,角度が一定に保たれる設計方法を確立する予定である.また,振動型アクチュエータが複数個連結されたシステムを試作し,その走行特性を計測する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
アクチュエータシステムの走行特性の計測に必要な実験設備および消耗品については,次年度に消費する予定である.
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