2020年度は,2個の同一諸元を有する往復移動型アクチュエータ,磁気車輪および柔軟なシリコンゴム材を組み合わせた電磁アクチュエータシステムの寸法に関する最適設計を行い,形状が大小異なる2モデルを試作し,推進特性および段差走行特性を測定した.小型アクチュエータシステムの全長は,305 mm,高さ58 mm,全質量は67 gであり,磁気車輪の外径は25 mmである.本アクチュエータシステムにおいて,220 gの付加質量を搭載した場合,垂直上昇速度は23 mm/sである.各振動体に0.2 Wの電力を入力した場合,垂直面上に配置された25 mmの段差を,18 mm/sの速度で上昇移動できることを示した.更に,4個の振動型アクチュエータを直列に配置した大型のアクチュエータシステムを試作した.本システムの全長は,715 mm,高さ75 mm,全質量は250 gであり,磁気車輪の外径は50 mmである.アクチュエータ単体への入力電力が6 Wの場合,アクチュエータシステム中央部に自動打音装置(質量250g)よりも重い300 gの負荷質量を搭載し,かつ1800 gの質量を搭載しても5 mm/sの速度で上昇移動が可能であることを示した.また,システム中央部に300 gの負荷質量を搭載すると,走行可能な最大段差高さは25 mmとなるが,これは申請書に記載した目標値を達成している.しかし,大型のアクチュエータシステムにおいて,保持部の強度不足のため,往復化移動を実現でなかった.このため, 2つの振動体を直交配置し,振動変位の位相差を利用することで,移動方向を切り替える原理を新たに発案した.本アクチュエータシステムには搭載できなかったが,今後,動作原理を完全確立したうえで,搭載したいと考えている.得られた成果は,海外における査読付き論文2編,国際会議論文3編としてまとめた.
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