研究課題/領域番号 |
18K04183
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
山田 章 愛知工業大学, 工学部, 教授 (20377815)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 半導体イオンセンサ / pH / 微小流体デバイス / 凍結濃縮 |
研究実績の概要 |
凍結濃縮は、水溶液の凍結が進む過程において、水に含まれる溶質や不純物が排除されて未凍結液側に移動することによって、局所的な濃度上昇が生じる現象である。この現象は、食品分野等において利用され、輸送効率の向上、品質の維持、さらには風味や味の増強による付加価値の向上等のために使われている。凍結濃縮による溶質の移動は水素イオン濃度指数(pH)の変動を引き起こすため、酸性・アルカリ性の程度の変化は含有される物質に影響を及ぼす。しかし、凍結濃縮に伴うpHの変動を的確に測定した報告例はなく、pH変動に関する詳細な知見は不十分である。本研究では、凍結・融解に伴うpHの変動を、高い時間・空間分解能で測定可能なシステムを構築することを目的とする。 これまでの進捗を以下に列挙する。(1)前年度までに取得した凍結濃縮評価システム構築のための基礎データを元に、システムの全体設計及び試作機の構築を行った。(2)試作システムの構築に際しては、全体設計に基づいて観測部、計測部、記録部など要素毎に要求仕様を定めて必要な機材を選定し、動作を検証した。(3)システム構築のために取得した基礎データから、氷塊の融解時のpH変動に関する新たな知見が得られてきた。 研究を推進する中で、当初は予想しなかった新たな知見も得られてきた。(1)凍結に伴って氷と水の間に凍結電位と言われる電位差が生じることが知られており、凍結濃縮に伴うpHの変動にも影響を与えている可能性がある。(2)溶液の組成や濃度によっては、凍結に伴うpH変動を小さくできる場合がある。 以上のことから、凍結濃縮に伴うpHの変化を測定し、用途に合わせた制御をできるようにすることを目指して、研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中心テーマに相当する測定システムの構築は、システムの全体構成が固まり、要素毎の仕様検討と機能検証を概ね済ませた。また、モデル水を用いた凍結濃縮に伴うpH変動の測定技術の検討にも一定の目処が立ち、前述の測定システムによる詳細なデータ取得ができるまでの準備が整った。以上は、概ね当初の実施計画に沿った進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに構築した試作計測システムを改善し、完成度を高める。現状は、観測部、計測部、記録部、毎に要求仕様を満たす機器を導入した段階にあり、各機器の最適化等は今後の課題である。各部の最適化によって、測定の時間・空間分解能のさらなる向上が期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗に伴って、物品の選定要件が変わったために、本年度の予算を若干残すことになった。次年度早々までには繰り越し分も含めて予算を使用する予定である。
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