凍結濃縮は、水が凍結する際に混合物や溶質を排除しながら氷の結晶が成長するために、凍結の遅い領域において濃度が上昇する現象である。食品分野では、濃縮果汁還元による輸送コストの低減や、濃縮により香りを高めるためなどに利用されている。凍結濃縮に伴って溶質の濃度が変動することから、これに伴って水の水素イオン濃度指数(pH)は変動することが知られている。pHの変動に関する報告には数十年前の論文がいくつか存在するが、いずれも測定の制度等の面で十分とは言い難い。その理由は、測定用のセンサとしてガラス電極を用いたことにある。本研究では、イオン感応型電界効果トランジスタによるpHセンサと微小流体デバイスを組み合わせたpH測定デバイスを用いて、凍結濃縮によるpHの変動を実計測した。測定には、塩化ナトリウム溶液、アルカリ性電解水、水道水、蒸留水を用いた。また、凍結濃縮への氷の大きさおよび凍結温度の影響を評価するため、氷の大きさを3種類、凍結温度を2種類(-20,-70℃)の条件で作製した。一方、凍結濃縮に伴うpH変動の自動測定システムの構築も試みた。凍結濃縮によるpHの変化は、氷の大きさ、溶液の種類、凍結温度によって異なった。氷の大きさが大きく、凍結温度が低い場合に凍結濃縮によるpH変化は大きかった。アルカリ性電解水を用いて65.5 cm^3の球形状の氷を-20℃で作製した場合には、氷の中心部と外周部では1.86 pHの変動があることが明らかになった。
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