研究課題/領域番号 |
18K04186
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高松 竜二 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (60342581)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 味覚センサ / QCMセンサ / 味 |
研究実績の概要 |
人の感じる味は,舌で感じる味でなく,様々な要因が関与している。この中でも,温度による味覚の変化(温度特性と呼ぶ)は,脂質高分子膜を受容部とした膜電位計測型の味覚センサを用いて,苦味物質に関しては計測することが可能となっている。一方で,苦味物質における脂質高分子膜の膜電位の変化の要因には,膜への疎水的吸着と静電的吸着によるものであると言われている。そこで,本研究では,脂質高分子膜を用いて味覚の温度特性を計測する基礎技術の確立を目的として,水晶振動子微小秤量(QCM)センサを用いたシステムを構築し,膜への吸着量と温度変化や膜電位との関係を計測し,更には,温度特性を計測するのに適した脂質高分子膜の再設計を行うことを目指す。 平成30年度は,主としてシステムの構築を行った。具体的には,膜への吸着後における吸着量の計測方法の検討や,QCMセンサ電極上への脂質高分子膜の作成方法の検討を行った。計測方法の検討の結果,脂質高分子膜に味溶液を作用させた後,気相中で計測することで,膜への吸着量が可能であることがわかった。液相中については,購入した別のシステムを利用したが,予想した計測結果が得られず,今後,検討の余地があると思われる。作成方法については,QCMセンサの発振がなかなか得られず,検討に時間がかかったが,計測が可能な条件を決定することができた。また,作成したシステムを利用して,苦味物質の濃度による吸着量変化および温度変化による吸着量変化の計測を行った。感度が低い点において問題があるが,濃度や温度が上昇すると,吸着量が増加する結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
30年度は,膜への吸着後における吸着量の計測方法の検討とQCMセンサ電極上への脂質高分子膜の作成方法の検討を行ったが,作成方法の検討に時間がかかり,計測ができる状態にするところまでしか検討することができなかった。しかしながら,作成した膜を用いた計測では,濃度および温度の変化に対して,予想通りの結果を得ることができている。31年度は,計測をしながら,膜の作成方法を再検討し,同時に,膜電位や温度変化と吸着量の関係を検討することで,遅れを取り戻すことができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり,31年度は,膜の作成方法を,実際に計測をしながら,再検討を行っていく予定である。また,ここで得られたデータも,次のステップである膜電位や温度変化と吸着量の関係の検討に用いることが可能であるため,作成方法の検討と同時に吸着量との関係を検討することで,効率よく研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
脂質高分子膜を作成する際の試薬について,予想よりもかなり少量でスピンコートをしないと,QCMセンサからの発振が得られなかったため,これらに関連する試薬の支出が少なくなったことと,発振回路を自作するつもりであったが,QCMセンサ購入時に付属していた発振回路でも十分な性能があったため,これらに関する電子部品などの支出が少なくなったためである。 ただ,測定回路などは,現状では仮に組んでいる状況であるため,次年度以降,回路をケースなどに入れるなどを行い,当初は計画していなかったノイズ等の対策を行うとともに,効率よく研究を進めるために,計測の自動化を行えるよう,計測器等をPCに接続することを検討する予定である。
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