本研究の目的は、計測部配置の自由度を確保しつつ、一本のファイバ上に設置した 100 点を超える測定点における振動を同時に測定可能な光ファイバ型多点振動センサを実現する事である。センサ素子として低反射率の光ファイバブラッググレーティング(FBG)で構成したファブリペロー干渉計を導入し、センサ応答の読み出しに半導体レーザの高速波長掃引を用いて、自由な設置が可能な多点振動センサシステムを実現する。 昨年度までに、外部業者に依頼して試作した低反射率 FBG-FPI と、通常の波長可変レーザを用いた低速な多点ひずみセンシングの動作確認を行い、その後、半導体レーザの高速波長掃引を用いたセンサ応答の読み出しの実証実験を行った。低反射率 FBG-FPI からの反射スペクトルは確かに正弦波の構造を有している事、周波数解析する事で各 FBG-FPI からの信号を分離し、多点同時測定が可能な事、半導体レーザの注入電流の変調によって得られる狭い範囲内ではあるが高速な波長掃引によって、充分にセンサ応答が読み出し可能な事が確認できている。狭い範囲の掃引によって読み出されたセンサ素子の反射スペクトルをそのままフーリエ変換した場合は、側帯波の影響による雑音が確認されたが、この影響は一般的な窓関数を適用する事で取り除くことができた。 今年度は、波長監視用干渉信号を検出する光検出器の応答速度を再検討し、より高速な応答が可能な光検出器に換装した。この結果、1 MHz の測定が実現できた。また、センサ信号の時間遅延の影響について検討し、遅延の補正を解析アルゴリズムに組み込んだ。この結果として混入するノイズを3分の2程度に抑制する事ができた。
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