研究課題/領域番号 |
18K04192
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
佐藤 淳 岩手大学, 理工学部, 准教授 (60324969)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | リセットシステム / ハイブリッドシステム / 安定解析 |
研究実績の概要 |
リセットシステムは連続的状態遷移に加えて,状態依存イベントの発生時には状態のジャンプを生じるハイブリッドシステムの一種である.本研究では申請者のリセットシステムに関するこれまでの理論的成果を発展させ,出力フィードバック型リセット制御の設計理論の構築に向けた研究を進めてきた. 2年目である令和元年度には,主に出力フィードバック型リセットシステムの漸近安定条件について発展した.本研究ではこれまで出力フィードバック型リセットシステムがジャンプ不動点を持つためにNesic et al.の安定条件が成立しないことに注目して新たな安定条件の提案を行ってきたが,本年度は共通のリセット条件に従う2つのリセットシステムのフィードバック結合に問題設定を一般化し,その漸近安定条件について研究を進めた.通常の連続時間システムはジャンプ前後で状態が変化しないリセットシステムとして記述できるため,これは従来の問題設定を特殊な場合として含んでいる. 問題設定の一般化により,前述のジャンプ不動点は「ジャンプ集合に含まれるジャンプ遷移モードのうちリセット判定出力からSchur不可検出なモード」に一般化される.Nesic et al.の安定条件はこのモードの存在を許さないが,本年度の研究によりリセットシステムが上記の不可検出モードを持つ場合でも,時間正則化を導入すれば連続遷移が強制され漸近安定化されうることが明らかになった.また従来の安定解析では直感的に,連続遷移によるLyapunov関数の減少を保証する領域はフロー集合と共通に選ばれてきたが,前者を後者とは異なる適当な領域に設定することで上記の不可検出モードの存在を許容することが可能になる.これにより従来結果と比べ保守性の低い安定条件が得られる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度報告時の推進方策に沿って,令和元年度ではリセット条件を共有する2つのリセットシステムのフィードバック結合に問題設定を一般化し,その漸近安定条件について考えた.その結果連続遷移によるLyapunov関数の減少を保証する領域をフロー集合とは異なる領域にとることでNesic et al.の結果と比べ保守性の低い安定条件を導けることを明らかにした.また時間正則化はZeno解を除去する手段として導入され,リセットシステムの安定解析においては一種のモデル誤差として扱われてきたが,不安定なジャンプモードの中には時間正則化を導入することで漸近安定化されるものが存在することを明らかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
1.安定条件の一般化:令和元年度の研究において問題設定を共通のリセット条件に従うリセットフィードバックシステムに一般化した.これに伴いジャンプ不動点を持つシステムのために提案されたリアプノフ関数の,リセット判定出力行列の右零空間に対応する部分を拡張する必要があり,近日中にその成果を報告する予定である.また重み行列のブロック対角構造を仮定しない安定条件の導出に引き続き取り組む. 2.一般化された問題設定におけるリセット制御則の系統的設計手法の提案:上記1.の結果に対応する,行列不等式アプローチによる指数安定性の導出を考える.そのために,ジャンプ集合に含まれるジャンプ遷移モードのうちリセット判定出力からSchur不可検出なモードが,フロー遷移によるLyapunov関数の減少を保証する領域の内部にあることを保証する条件の導出について考える.またフロー遷移モードのうちリセット判定出力からHurwitz不可検出なモードが,フロー集合の外にあることを保証する条件の導出についても考える.これらの条件には等式を含む弱い不等式条件が含まれると予想される.そのため実行可能集合は開集合にならず解の単純な摂動が許容されないので,弱い不等式条件を破らないような摂動を明らかにする必要があると思われる. 上記の1,2が十分に進捗した場合次の研究課題にも取り組む. 3.衝突現象を含むシステムの制御問題への応用:インフラ点検用ドローンは障害物が密集する中を飛行するため周囲環境との衝突は避けられず,そのような外乱の存在を考慮した飛行制御が強く求められている.そこで上記1,2の結果をインパルス外乱の影響を効果的に抑圧する制御系の設計に応用し有用性を示す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が新型コロナウイルス対応などで多忙であったため予算の執行に遅れをきたし次年度使用額を生じてしまったものです.令和2年度分の助成金と合わせ物品費として速やかに執行いたします.
|