研究課題/領域番号 |
18K04201
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高井 重昌 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60243177)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 制御工学 / 離散事象システム / スーパバイザ制御 |
研究実績の概要 |
形式手法に基づく制御系設計においては,制御対象を有限オートマトンにより表現できる有限状態システムとして近似するが,その際,状態遷移に非決定性が生じる場合がある.そこで,本研究では,非決定性オートマトンでモデル化された離散事象システムとその制御仕様に対して,一般的なスーパバイザ制御理論を確立することを目的としている. 離散事象システムの制御においては,一般に,タスクの終了などを表す目標状態への到達可能性を保証するノンブロッキング性が重要である.非決定性離散事象システムに対して,制御されたシステムが制御仕様に模倣され,かつノンブロッキングとなるようなスーパバイザを構成する問題に対して,研究代表者の従来研究では,対象システムで生起する事象と現在の状態が観測可能であるという仮定のもとで,スーパバイザが存在するための必要十分条件が導出され,スーパバイザの構成法が提案されている.しかし,構成されたスーパバイザに対して,その最適性の指標である最大許容性については考察されていなかった.そこで,本研究では,構成されたスーパバイザが最大許容であることを理論的に明らかにした.この成果により,従来研究において構成されたスーパバイザは最適なスーパバイザであることが示された. 離散事象システムのスーパバイザ制御は,形式手法に基づく制御系設計の基本的枠組みとみなせ,得られた成果は形式手法に基づく制御系設計理論の構築に貢献するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度では,非決定性オートマトンでモデル化された離散事象システムとその制御仕様に対して,制御されたシステムと制御仕様が双模倣等価となることを要求する,双模倣制御問題の解となるスーパバイザが存在するための必要十分条件を導出し,導出した条件の検証およびスーパバイザの構成のための計算量を解析し,その評価を行うことを計画していた. 実際には,まず,双模倣制御問題に取り組む前に,制御されたシステムが制御仕様に模倣され,かつノンブロッキングとなるようなスーパバイザを構成する問題について考察し,研究代表者の従来研究における構成法により構成されたスーパバイザは,最大許容性を有する最適なスーパバイザであることを明らかにした.この成果は査読付き学術論文誌IEICE Transactions on Fundamentalsに掲載されている. また,計画していた双模倣制御問題に関しても,未完成ではあるが,主要な問題点はすでに解決できている. よって,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
まず,非決定性オートマトンによりモデル化された離散事象システムとその制御仕様に対して,対象システムの状態が観測可能であるという仮定を課すことなく,制御されたシステムと制御仕様が双模倣等価となることを要求する双模倣制御問題の解となるスーパバイザが存在するための必要十分条件を導出し,スーパバイザの一般的な構成法を確立する. 双模倣制御問題の解となるスーパバイザが存在しない場合には,双模倣等価性という要求を緩和し,緩和された要求に対してスーパバイザを構成する必要がある.そこで,対象システムの状態が観測可能であるという仮定を課すことなく,制御されたシステムが制御仕様に模倣されることのみを要求する模倣制御問題について考察する.模倣制御問題においても,仕様を満たさないシステムの振舞いは禁止され,その意味で,システムの安全性が保証される.そのため,スーパバイザの最適性の指標である許容性に関して最適な,最大許容スーパバイザの構成法を開発する. そして,得られた双模倣制御,模倣制御に関する成果を,事象の生起の部分観測の場合へ拡張し,さらに,ネットワーク化制御系への適用のため,複数のローカルスーパバイザによる分散制御へと拡張する. これらの制御問題に加え,制御系の信頼性を高めることを目的に,システム内での故障事象の生起などを検出するための診断システムに関する研究にも取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度においては,理論的研究が主であったため,当初購入予定であった計算機の購入を次年度以降に延期することとした.そのため,次年度使用額が生じた.そこで,次年度使用額を計算機を購入するための物品費の一部に充てる計画である.
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