本研究では,非決定性オートマトンでモデル化された離散事象システムとその制御仕様に対するスーパバイザ制御理論を確立することを目的としている. 今年度は,制御されたシステムの振舞いが制御仕様に模倣されることを要求する模倣制御問題において,タスクの終了などを表す目標状態への到達可能性を保証するノンブロッキングな最大許容スーパバイザの構成法を開発した. 研究期間全体を通じた成果として,まずは,制御されたシステムと制御仕様が双模倣となるようなスーパバイザを構成する双模倣制御問題に対し,その解となるスーパバイザが存在するための必要十分条件として,対象システムと制御仕様が満足すべき性質を初めて明らかにした.また,解となるスーパバイザのシステマティックな構成法を開発した.さらに,制御仕様が決定性のオートマトンでモデル化される特別な場合では,事象の部分観測のもとでも解となるスーパバイザの存在性が多項式オーダで検証できることを明らかにした.双模倣制御問題の解となるスーパバイザが存在しない場合には,双模倣等価性という要求を緩和した模倣制御問題において,スーパバイザの最適性の指標である許容性に関して最適で,かつノンブロッキングであるような最大許容スーパバイザの構成法を開発した.また,模倣制御問題において複数の制御仕様を同時に満足することが要求される場合,制御仕様ごとにスーパバイザを構成するモジュラアプローチにより,最大許容スーパバイザが構成できることを明らかにした.モジュラアプローチには,スーパバイザを構成するための計算量が軽減される,一部の仕様に変更が生じた場合,変更された仕様に対するスーパバイザのみを再構成すればよい,といった利点がある. 本研究のこれらの成果は,形式手法に基づく制御系設計理論の構築に貢献するものである.
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