研究課題/領域番号 |
18K04202
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 訓志 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60533643)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 非線形制御 / 確率制御 / 最適制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,以下の三点の課題に取り組んでいる. ① 観測出力から非線形フィルタによる状態推定値に基づき最適FB入力を求める,出力FB型確率最適制御問題の解法の構築 ② 有限評価区間確率最適制御から,評価区間を後退させながらサンプル時刻毎に実時間で解く非線形確率モデル予測制御への拡張 ③ 実装上重要な実時間最適化の計算速度について,並列化と統計的重要度評価による計算速度高速化手法の開発,および非線形性,未知環境,通信の不確実性を伴う小型無人ヘリコプタの最適飛行制御による実機検証 2019年度は,非線形システムの一クラスに対する非線形状態推定機構とその安定性解析の拡張,確率最適制御法の非線形確率モデル予測制御への拡張に関する基礎研究,および並列計算に基づく計算速度高速化の実証のための環境構築について主に取り組んだ.まず,前年度に得られた非線形システムの重要な一クラスであるSO(3)に関する非線形姿勢推定機構を,並進と回転を扱うためにSE(3)に関する非線形位置・姿勢推定が可能となるように拡張を行った.つぎに,これまで開発してきた確率最適制御における問題設定では評価区間が固定だったが,この評価区間を現時刻が進むのに合わせて後退させながら有限時間確率最適制御問題を繰り返し解くことができるように解法の拡張を行った.今年度は状態FB制御の枠組みのままで上記拡張を行った.さらに,これまで並列計算の実装としてマルチコアCPUを用いた方法のみを用いていたが,GPGPUによる並列化実装を行うために計算機およびCUDAによるプログラム環境を整えた.さらに三次元剛体の3軸姿勢制御に関する実験を行い,目標値整形機構つき線形モデル予測制御法を用いた実機実証を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の研究課題①~③に関して,課題①においては,非線形システムの中の応用上重要なクラスであるSE(3)に関する非線形位置・姿勢推定フィルタの導出および推定誤差の安定定理を得ている.課題②に関して,状態FB制御の枠組みでは確率最適制御法の非線形確率モデル予測制御への拡張に関する理論結果を得た.また課題③に関して,並列計算による高速計算の検証のための環境を構築し,さらにクアッドコプタ試験機による実機検証に先立ち,三次元剛体の3軸姿勢制御に関する実験を行い,目標値整形機構つき線形モデル予測制御法を用いた実証結果を得た.これらのことから,本研究課題の進歩についておおむね順調に進展していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は,課題①については非線形確率システムにおける状態推定と確率最適制御による出力FB確率最適制御の理論開発を行う.その後,課題②に関してこれまで得られた結果と組み合わせることで,非線形確率モデル予測制御への拡張に取り組む.課題③については,マルチコアCPUおよびGPGPUを活用した並列計算による高速計算手法の比較実証へ進み,クアッドコプタ試験機による実機検証を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際共同研究を行っているトリノ工科大学(イタリア)に共同研究打ち合わせおよびサマーセミナー講師のため滞在を予定しておりそのための渡航費および滞在費を確保していた.その他にも国内学会・セミナー参加のための予算を確保していた.しかし,新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため,イタリアへの渡航の延期,国内学会・セミナーが相次いで中止となったため次年度使用額が生じた.状況を慎重に見極めながら引き続きイタリア渡航を予定しており,繰り越した渡航費については次年度に使用する予定である.
|