研究課題/領域番号 |
18K04204
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
増淵 泉 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (90283150)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非線形システム / 安定性解析 / 時変システム / リアプノフ密度 / 正不変性 / 逆定理 / 無限次元システム / 作用素不等式 |
研究実績の概要 |
非線形ロバスト制御理論への数理的アプローチの深化を目的に,以下の研究を行った. ・リアプノフ密度を用いた非線形システムの安定性解析について,時変システム・周期時変システムの解析についての安定条件(厳密には,正不変性および解軌道の収束性の条件,逆定理についての結果を含む)を完成させた.これは SIAM J. Control. Optimization 誌に掲載された.さらに,非線形システムが時変不確かさを有する場合のロバスト安定性条件,およびロバスト安定化を達成する非線形状態フィードバックゲインのリアプノフ密度を用いた構成法を導いた.これらについては現在国際会議への投稿を準備している. ・無限次元系のフィードバック制御において,入力端にフィルタを付した形の状態フィードバック制御則の線形作用素不等式による設計法を導いた.閉ループ系の well-posedness が,開ループ系のステップ応答の存在によって保証されることを着想した.この結果を国際会議にて発表した.また,熱方程式(一般には Riesz spectral system)と有限次元系を結合した PDE-ODE 系において,安定化が達成されるための必要十分条件となる作用素不等式の十分条件を有限個の変数,有限個の不等式(線形行列不等式,LMI)により与え,状態フィードバックゲインを計算できることを示した.同様のアプローチによる従来研究として M. Peet らによるものがあるが,この従来研究においては乗算作用素と積分核作用素に基づくリアプノフ関数に限定して設計のためのLMIを導いているのに対し,本研究ではリアプノフ関数をこのような形に予め限定することなくLMIを導いている.以上の内容については国内学会で発表予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に挙げた項目について,非線形システムに関しては時変の不確かさを有する場合に対するロバスト安定性・安定化条件,また無限次元系については,線形作用素不等式による状態フィードバックゲインの計算法として,従来法のようにリアプノフ関数のクラスを限定することなくLMIとして扱う方法を考案している.以上のように研究が進展しており,また国内外での発表も行っている.
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今後の研究の推進方策 |
リアプノフ密度に基づく非線形システムの安定性解析に関しては,不確かさ,外乱の下でのロバスト性に関する考察を進める.無限次元系については,Riesz spectral system と有限次元系が結合した PDE-ODE 系の出力フィードバック制御に焦点を当てたい.また,無限次元系のロバスト性解析に着手してゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外への出張が不可能となり講演会等がオンライン化された結果,旅費に関して未使用の額が生じている.これを機会として活かして,適切なタイミングで高性能な計算機の導入を検討している.本研究では数値計算に帰着させるアプローチを内包しており,高性能な研究の導入は研究の推進に役立つと考えている.
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