研究課題/領域番号 |
18K04209
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
児島 晃 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (80234756)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゲインスケジュールド制御 / 線形パラメータ変動システム / ロバスト制御 / 線形行列不等式 |
研究実績の概要 |
本研究は,[A]パラメータの多項式非線形を扱うゲインスケジュールド制御法を開発し,成果を,[B]自然エネルギー大量導入時の系統制御などの重要な課題に適用し,有用性を評価することである.令和2年度においては,課題[A],[B]に取組み,以下の成果を得た. [A] 昨年度までの研究により,Bernstein基底に基づくパラメータ依存のLMI(線形行列不等式)の解法が導かれており,さらにこれらの基底から構成される有理式を用いると複素指数関数など,むだ時間系の解析に展開できることが分かった.これらの結果は,Bernstein基底から円錐曲線が生成できることに着目して導かれたものである.そして本手法により,区間むだ時間系の有界実補題を考察し,必要十分条件が一連の手法により導かれることを明らかにした. [B] 1) 太陽光発電などの自然エネルギーが大量導入された電力系統に着目し,軽負荷時の負荷周波数制御のゲイン調整法を考察した.そして,擾乱抑制性能を維持するH∞ゲインスケジュールド制御の有用性をシミュレーションにより評価した.また,負荷変動に対する情報の有用性を慣性定数の増加分ととらえた性能指標について検討した. 2) 2リンクのロボットマニピュレータの制御問題に本手法を適用し,先端負荷・姿勢による慣性行列の変化をスケジューリングパラメータで調整するサーボ系の構成法を明らかにした.そして,達成される性能を,シミュレーションおよび実機実験により評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主要な課題であるゲインスケジュールド制御法の開発は順調に進み,Bernstein基底から系統的な解法が整備され,また区間むだ時間系の性能解析に関する基礎的な結果が得られた.しかしながら,応用面において電力系統の負荷周波数制御が,部分状態に基づく設計法であることから,設計法の検討にさらに時間を要する.メカトロニクス系(マニピュレータ)に成果を適用する研究は順調に進められたため,これらの研究から得た知見を援用しながら,電力系統への応用の検討を進める.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果を踏まえ,以下の研究を展開する. [A] ゲインスケジュールド制御法の成果をまとめ,円錐曲線など力学系に現れる関数形に着目したパラメータ依存のLMI(線形行列不等式)の解法を検討する. [B] 慣性変動を考慮した負荷周波数制御の考察を進め,H2,H∞制御における制御ゲインの調整法を明らかにする.また,ロボットマニピュレータの制御においては,フィードフォワードゲインを含めたスケジューリング制御法の検討と3リンクの機構に着目した実験的研究を行い,設計法の有用性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理論的な成果とプログラムの整備が進み,学生アルバイトによるプログラミング補助(アルバイト費)と当初想定していた成果発表に関わる旅費の支出が不要となった.次年度に繰り越された予算は,スマートグリッドの応用研究に要する文献等の補強,ロボットマニピュレータの実験環境の整備に使用し,また,成果発表の経費に用いる.
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