本研究では,機構系と制御系を統合的に設計する「すり合わせ」手法として,「高性能ロバスト機構・制御系設計の可視化手法」を実現した.この手法では,機構系特性が変動した場合においても性能仕様を達成する条件を周波数応答上にて定量的に図示することで,機構系技術者および制御系技術者の両者が共通に理解できる新しい「すり合わせ」が可能となる.その後,提案手法をハードディスクドライブ(HDD)の磁気ヘッド位置決め制御系に応用し,「今後の高度情報化社会を支える次世代HDD」に必要な機構系および制御系の条件を明らかにした. 具体的な成果は次の4点となる.①コントローラのみならず,機構系特性が含まれる制御対象のBode線図上においてもロバスト制御性能を満たす条件を可視化可能とするアルゴリズムを実現した.②多入力多出力系に対応した可視化された制御系設計法を考案した.③HDDの2段アクチュエータ系における「位置決め制御性能と機構系特性(VCM系およびPZTアクチュエータ系)の関係」を明らかにした.また,現状の2段アクチュエータ系の改良による制御性能の限界を明らかにした.④HDDの3段アクチュエータ系における「位置決め制御性能と機構系特性(VCM系,PZTアクチュエータ系,3段目の新アクチュエータ系)の関係」を明らかにした. なお,現在の情報産業の急速な発展速度に適合するためには,当初計画を1年前倒しで完了し,より難易度の高い新技術に関する研究を早急に開始することが必要となった.その結果,最終年度に行う予定であった「アクチュエータ飽和などの非線形な機構系特性に対しても利用可能となる可視化された制御系設計法」の検討は,本研究を引き継ぐ形で行われる基盤研究(C) JP22K04170「機構・制御系統合化設計の高度化と次世代HDDへの応用」にて行う予定である.
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