研究課題/領域番号 |
18K04211
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
足立 修一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40222624)
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研究分担者 |
丸田 一郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20625511)
井上 正樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (80725680) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | システム同定 / ガウス過程回帰 / 閉ループシステム同定 / 二次電池 / 自動車 |
研究実績の概要 |
前年から引き続き,以下の検討を行った。 (1)対象の物理的な事前情報を考慮したシステム同定法:自動車メーカとのガソリンエンジンのモデリングと制御についての共同研究を通して,対象の物理的な事前情報を考慮したシステム同定法についての研究を行っている。具体的には,吸気システムをモデリングの対象として,入力をエンジン回転数,インテークマニホールド圧力,吸排気バルブタイミングとし,出力をシリンダ吸入吸気量としている。今年度は,このシステムの物理モデルを活用して,物理モデル出力と実際の出力の残差を学習し,それをモデリングに活用するという,ガウス過程回帰を用いた残差学習を提案した。現在,実データを用いたシミュレーションで提案法の有効性を検証している。 (2)物理化学的特性を考慮した二次電池のモデリング:これまでは主にリチウムイオン二次電池の充電率(State-Of-Charge: SOC)推定問題を取り扱ってきたが,今年度からは新たに二次電池の健全度(State-Of-Health: SOH)の推定問題の検討を開始した。二次電池の劣化推定を行うこの問題は時定数が長いため難しい問題であり,さらに電池のユーザが充電したり放電したりするというフィードバック動作が存在する。そのため,閉ループシステム同定問題として,SOH推定問題を定式化することを提案した。共同研究者の丸田が提案している,安定化予測誤差法を用いてこの問題を解く方法を提案し,実データを用いた数値シミュレーションを通して,その有効性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象システムとしている自動車用エンジン,自動車用リチウムイオン二次電池に関する実験データは,従来から共同研究を続けている企業から提供されており,それを用いて,物理と情報を融合した新しいモデリング法の開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,以下の検討を行い,研究の完成をめざす。 (1)対象の物理的な事前情報を考慮したシステム同定法:引き続き,自動車メーカとのガソリンエンジンの吸気システムのモデリングと制御についての共同研究を通して,対象の物理的な事前情報を考慮したシステム同定法についての研究を行う。このシステムの物理モデルの精度に応じて,実データによるガウス過程回帰を用いた残差学習をチューニングする方法について検討していく。また,学習データを設計するアクティブラーニングの検討も行う予定である。 (2)物理化学的特性を考慮した二次電池のモデリング:二次電池の健全度(State-Of-Health: SOH)の推定問題の枠組みを定式化できたので,今後は実データを用いた問題点の洗い出しや,方法の改良を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
政府発表の「新型コロナウィルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」を鑑みて、3月に成果発表を伴う出席を予定していた学会が開催中止の旨、主催者より通知があったため、執行予定であった旅費については次年度に繰り越し、改めて学会参加など討論の場に臨むための費用に充当する。
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