研究課題
制御理論の研究分野では,制御対象のシステムクラスの選定は問題設定上,重要である.一般的に,システムモデルは陽的システムと陰的システムの2種類に分類できる.陰的システムは陽的システムを包括するように一般化されているので,陰的システムに対する制御理論を構築する方が,陽的システムに比べてより学術的価値が高いといえる.本研究では,モデル予測制御と呼ばれる,状態制約や最適性を考慮できる制御手法に基づいて,一般化された陰的システムに対する制御系設計手法を構築することを目的としている.当該年度の研究実績として,一般化陰的非線形システムに対するモデル予測制御系設計法を確立している.モデル予測制御手法は最適フィードバック制御手法であるため,最適制御問題における最適条件の解法を考案する必要がある.陽的システムに対する最適条件はオイラー・ラグランジュ方程式と呼ばれ,その解法は既に構築されている.本研究では,一般化陰的非線形システムに対する最適条件を導出し,その解法を考案している.モデル予測制御手法は,システムの状態がすべて観測可能でないと直接適用できないことが知られている.そこで本研究では,一般化陰的非線形システムに対するUnscented Kalman Filterに基づく状態推定手法を考案し,モデル予測制御手法と併用する制御系設計法の枠組みを構築した.これにより,システムの状態変数が部分的にしか観測できない場合でも,考案したモデル予測制御手法の適用が可能となった.
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画では,一般化陰的非線形システムに対するモデル予測制御系設計法を確立することが初年度の達成目標であったが,予定より早く研究目標を達成することができたので,一般化陰的非線形システムに対する状態推定問題の課題に取り組み,Unscented Kalman Filterに基づく状態推定手法を考案することができた.これにより,一般化陰的非線形システムに対して,モデル予測制御手法と状態推定手法を併用する制御系設計法を確立することができた.
以下で挙げられる研究課題を,番号順に段階を踏んで取りくみ,残りの研究期間内にすべて達成する計画である.①本年度に考案された制御系設計法を流体の基礎運動方程式として知られるバーガス方程式を離散近似して得られる陰的非線形システムに対して適用し,その有効性を検証する.②システム方程式及び最適条件の解の存在性と可解性の確認を行う.③一般化陰的非線形モデル予測制御系の安定性解析を行う.④一般化陰的非線形モデル予測制御において導出された一般化最適条件の高速数値解法アルゴリズムを構築する.
年度末の出張予定の変更により次年度使用額が生じたので,次年度の旅費として使用する計画である.
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Mathematical and Computational Sciences
巻: Vol. 12, No. 7 ページ: pp. 147-151
10.5281/zenodo.1340585