当該年度(2023年度)は最終年度として,残されていた研究課題に取り組み,研究計画をすべて達成した.具体的には,一般化陰的非線形システムの一例として,Brayton-Moser方程式で記述されるRLCネットワーク回路に着目し,その陰的非線形モデル予測制御系の安定性解析を行い,安定性を保証するための条件を導出した.また,研究期間全体を通して,以下で述べる研究成果が得られた. まず,一般化陰的非線形システムに対する最適条件を導出した.陽的システムに対する最適条件はオイラー・ラグランジュ方程式と呼ばれ,よく知られている.陰的モデルに対する変分法を考案し,従来の最適条件を包括する一般化オイラー・ラグランジュ方程式を導出した. 次に,システム方程式及び最適条件の解の存在性と可解性の条件を確認した.陰関数定理を用いて,システム方程式及び最適条件の解の存在性と可解性を特徴づける条件を導出した.さらに,一般化陰的非線形モデル予測制御系の安定性解析を行った.陰的リアプノフ関数を用いて,モデル予測制御による陰的非線形システムの閉ループ系の安定性を保証するための条件を導出した. 一方で,導出された一般化オイラー・ラグランジュ方程式の高速数値解法を構築し,Brayton-Moser方程式で記述される電気ネットワーク回路システムを応用例として提案手法の有効性を確認した.また,陰的非線形モデル予測制御と状態推定手法を組み合わせる制御系設計法を考案し,数値シミュレーションによりその有効性を確認した.
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