研究課題/領域番号 |
18K04222
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研究機関 | 株式会社豊田中央研究所 |
研究代表者 |
伊藤 優司 株式会社豊田中央研究所, 戦略先端研究領域 ナノセンシングプログラム, --- (10613565)
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研究分担者 |
藤本 健治 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293903)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | データ駆動型制御 / 確率最適制御 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、複雑な対象を表現可能なデータ駆動型モデルを用いて、対象を最適かつ安定に制御する方法論を解明する事である。研究代表者らがこれまで検討してきた技術群「データ駆動型最適制御」を基盤に進めている。令和元年度は、非線形性や不確かさを表現できるデータ駆動型モデルに対して、(1)カーネル関数を用いた非線形モデルに対する最適制御、(2)確率システムの安定化制御、(3)多項式の評価関数に対する確率システムの最適制御、の3テーマに着手し一定の成果を得た。詳細を以下に記す。 (1)に関して、前年度で構築した最適またはロバストな制御設計法(厳密解法)に対する数値シミュレーションを行った。外乱の無い場合の最適制御、確定的な外乱発生時のロバスト制御、確率的な外乱発生時のロバスト制御、の三通りの条件下において、提案手法を既存手法(線形近似したシステムに対して設計された制御則)と比較した。いずれの条件下においても提案手法が既存手法よりも高い性能であることを確認した。また、安定性の評価も行い、数値的(近似的)な意味で安定性が保証されていることを確認した。 (2)に関して、時変及び時不変な性質の確率パラメータ両者を含む線形確率システムに対して、安定性の評価方法や安定化制御則の設計方法を構築した。前年度までは時変と時不変のいずれかの確率パラメータに限定されていたことに対し、クロネッカー積を用いた行列不等式に注目することで、両者を含む場合の安定化制御則を設計可能にした。 (3)に関して、時不変の確率パラメータを含む線形確率システムに対して、多項式で記述された評価関数を最小化するための最適制御則の設計方法を構築した。前年度まではシステムの状態と入力の二次形式の評価関数に限定されていたが、クロネッカー積を用いた級数に注目することで多項式の評価関数を扱えるように拡張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非線形性や不確かさを表現できるデータ駆動型モデルに対して、平成30年度、令和元年度では、(1)統計的最適制御問題の解法、(2)安定性(安定領域)の判別方法の構築、の2テーマを並行して進める予定であった。これらの2テーマに対し、令和元年度までに以下に記す通り一定の成果が得られた。 (1)に関して、確率パラメータを含む非線形確率モデルに対しては確率最適制御則の設計法(近似解法)を、カーネル関数を用いた非線形確定モデル(不確かさを外乱とみなす)に対してはロバストな制御則の設計法(厳密解法)を、それぞれ構築した。また、対象の確率システムを線形に限定することで、多項式で記述された評価関数を用いた確率最適制御則の設計法(近似解法)を構築した。これらの有効性をそれぞれ数値シミュレーションで確認できた。 (2)不確かさを表現する分散項も含めたガウス過程モデルに対して、確率的な安定性(安定領域)の判別方法を構築した。また、対象のシステムを線形に限定することで、時変と時不変の確率パラメータ両者が混在した複雑な不確かさに対しても、安定性の判別方法を構築した。これらの有効性をそれぞれ数値シミュレーションで確認できた。 さらに、これまでの研究成果をまとめて学術論文誌・国際会議論文等での発表する事も進めている。既に1件は査読付き論文誌(IEEE ACCESS)、3件は査読付き国際会議に採択もしくは発表済みであり、その他の成果も論文誌に投稿し査読中、もしくは投稿準備が整いつつある。以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)統計的最適制御問題の解法、(2)安定性(安定領域)の判別方法の構築、の2テーマに関して、令和元年度までに得た結果を拡張する事や、複数の結果を統合して一つの理論体系としてまとめる推進方策が主となる予定である。尚、研究代表者と研究分担者の役割分担に関しては、具体的な研究課題を進める上で必要に応じて適宜変更する。令和2年度の研究課題候補の一例を以下に記す。 ・統計的最適制御問題の解法:これまで扱ってきた多項式型の評価関数をさらに拡張し、より柔軟に設計可能な自由度の高い評価関数を扱える手法を構築する。 ・安定性(安定領域)判別方法の構築:時不変の確率パラメータを含むシステムに対して安定性を考える際、これまではパラメータの取り得る全ての値に対して安定化可能(ロバスト安定化)な場合を想定していたが、そうでない場合、即ち安定確率を1にできない場合の対応も重要となる。そこで、安定確率を最大化するための制御設計法を構築する。 ・安定性と最適性を両立した制御設計:非線形性や不確かさを含むモデルに対して、安定且つ(近似的に)最適な制御設計法を構築する。 尚、これらの課題は対象のモデルが複雑すぎると検討が困難になるため、非線形性と不確かさの一方のみを表現できるモデル等、少し簡単な問題設定から検討する事も想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度に行う予定であった英語論文執筆にやや遅れが生じ、必要な英文校正費を令和2年度に持ち越した事、また、令和2年度に2つの国際会議で成果発表を行う可能性があり、令和元年度の予算を令和2年度の海外出張費として補填する必要がある事、が主な理由となります。ただし、令和2年度の国際会議は国内から遠隔での実施となる可能性が高いため、令和2年度の追加分の使用計画としては、複数本の英語論文執筆に必要な英文校正費、研究代表者と研究分担者の打ち合わせのための旅費、等を主とした使用を予定しております。
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