研究実績の概要 |
本研究では、高効率中間バンド型太陽電池の光吸収材料としてワイドギャップ半導体であるCuGaS2(以下、CGS)半導体母体材料及び母体太陽電池の研究を進め、磁性不純物添加により、不純物バンド物性を調べることを目的とする。 三年間の実施期間の中、一年目はまず、Moをコートしたガラス基板にCGS母体層の成膜を実施し、結晶性及び電極との整合性の評価を進めた。 二年目は、CGSを母体太陽電池作製へ推し進めるため、三つの課題に焦点を当て、研究を進めた。(イ)下部Mo電極層及びCGS光吸収層間でショットキーバリアの低減に向けて、CGSの二段階成膜法を実施したことで良質なオーミック接触が得られた。(ロ)上層部バッファ層において、CdS、In2S3等の成膜評価を行い、ワイドギャップ(Zn,Cd)S材料の選定ができた、(ハ)n型電極層としてAlドープしたn型ZnO薄膜のスパッタ成膜により良質な電極層が得られた。 本年度(最終年度)は、まず、太陽電池動作においてバッファ層のバンドオフセットや物性が電池特性にどう影響するかを明らかにした。CdSにZnの添加によりワイドギャップ化が窓層の光吸収損失や光電流コレクション損失が期待できる。研究を進めた結果、20%くらいZnを添加したCd0.8Zn0.2S(以下、CZS)のバッファ層の膜厚を約50nmと作成した太陽電池では太陽電池特性が向上した結果が得られた。最終年度のもう一つの研究課題は中間バンド型太陽電池材料としてCr添加したCGSの不純物バンド物性を調べることである。そのため、Cr添加したCGS薄膜をスパッタ製膜し、PL発光特性評価を進めた。その結果、2.43eVのバンドギャップ発光と並行して、1.5eVのバンドギャップ中PL発光が確認できた。これらの成果がワイドギャップCGS材料を母体とする不純物バンド型太陽電池の動作実証へ大きく推し進めると思われる。
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