研究課題/領域番号 |
18K04227
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
赤堀 誠志 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 准教授 (50345667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スピン軌道結合 / MnAs/InAs / スピンバルブ素子 / 界面構造 / 面内スピン伝播 |
研究実績の概要 |
大きなRashbaスピン軌道結合を有する半導体チャネルと強磁性体金属電極との複合構造からなるスピン電界効果トランジスタの実現を目指して、我々はGaAs(111)B上MnAs/InAs系ヘテロ構造を利用したスピンバルブ素子に関する研究を進めている。本研究では、MnAs/III-V系ヘテロ構造を利用したスピンバルブ素子の作製と局所・非局所特性評価を行うとともに、未だ十分にできていない界面構造を原子レベルで評価し、それらを比較検討することにより、界面構造と面内スピン伝播との相関を明らかにする。より具体的には、成長条件や層構造・基板に対する表面形状・結晶構造・磁気特性・電気特性および界面構造の変化を系統的に評価するとともに、チャネルの細線化や金属/絶縁体/半導体ゲート形成を進め、寸法やゲート電界に対するスピンバルブ特性の変化を系統的に評価していく。 今年度は研究開始2年目であり、研究開始以前にも作製してきたGaAs(111)B上のMnAs/InAsおよびMnAs/GaAs/InAsへテロ構造を、成長条件を変えながらMBE成長することをまず目指した。しかしながら、MBE成長実験を新たに担当した学生への指導が十分行き届かなかったため、実験初期に生じたMBE装置不具合の改善が進まず、昨年度同様に目指していたMBE成長実験がほとんどできなかった。そこで、昨年度進めた局所・非局所スピンバルブ特性評価および解析を基に、さらに追加の特性評価及び解析を行い、それらをまとめて論文化した。また、昨年度末新たに導入された高速パターニング可能なマスクレスリソグラフィー装置を用いて、本研究とは別の半導体ヘテロ構造を用いて、スピンバルブ素子作製プロセスの検討およびスピンバルブ素子の特性評価も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
MBE成長による新たなMnAs/InAsおよびMnAs/GaAs/InAsへテロ構造の作製がほとんどできておらず、大きな目的の一つとしている界面構造評価に着手できていない。 他方、過去に作製したスピンバルブ素子評価・解析結果のまとめや、別の半導体ヘテロ構造を用いたスピンバルブ素子の作製プロセスの検討や特性評価は進んでおり、これらが今後本研究の進展につながるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
MBE成長を担当する大学院生は確保できており、またMBE装置の不具合も解消しつつあることから、遅れている試料作製を加速させ、界面構造評価に着手するとともに、これまでに検討した条件で細線チャネルとMISゲートを有するスピンバルブ素子を試作し、スピンバルブ特性に関して寸法やゲート電界に対する系統的な評価を進める。面内スピン伝播特性と界面構造との相関を明らかにしつつ、さらに結晶成長面での改善も試みる。格子歪や欠陥密度の低減が有効な場合も考えられるので、GaAsバリア層だけではなくInGaAsバリア層への利用や、基板としてGaSb(111)Bの利用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
MBE成長実験を新たに担当した学生への指導が十分行き届かなかったため、実験初期に生じたMBE装置不具合の改善が進まなかった。このため、昨年度同様に目指していたMBE成長実験がほとんどできず、実験補助謝金の支払いがなかった。また学会等が中止になったことにより旅費支出が不要になった。これらが次年度使用額が生じた主な理由である。来年度はMBE装置不具合の改善に取り組み、MBE成長実験補助謝金を支払って研究を加速する計画である。
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