研究課題/領域番号 |
18K04228
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
塩島 謙次 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (70432151)
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研究分担者 |
橋本 明弘 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (10251985)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ショットキー電極 / 界面顕微光応答法 / GaN / SiC / α-Ga2O3 / 信頼性評価 |
研究実績の概要 |
本研究課題では我々が独自に開発した金属/半導体界面の2次元評価法(界面顕微光応答法)をワイドバンドギャップ半導体上に形成した電極の劣化機構の解明に適応できることの実証が目的である。これまでは可視光光源を用いて電極界面のみの情報を得ていたが、今回は半導体のエネルギーバンドギャップよりやや小さな光子エネルギーをもつ近紫外光を用いることにより空乏層中の情報もあわせて評価出来ることを提案している。 本年度はGaN、SiC、α-Ga2O3上に形成した電極の劣化機構の評価を行った。GaN上の電極においては、近紫外光を用いることで可視光では検出できないGaN中の結晶欠陥由来の不均一性を観測することができた。さらに電圧を印加することにより、結晶欠陥が存在する領域から電極が劣化する現象を“その場観察”することが出来た。この結果は本研究課題が提案した界面顕微光応答法の有効性を実証したものであり、ワイドバンドギャップ半導体素子の信頼性評価に大きく役立つ結果である。 SiC上の電極は、金属/絶縁体/半導体(MOS)構造に電圧を印加して劣化機構の評価を行った。30 V程度の電圧印加で電極が部分的に劣化する様子を2次元像で捉えることが出来た。さらに検出した交流光電流の位相成分を分析することにより、劣化部分の電流は非劣化領域とは異なる成分(真電流と変位電流)をもつことを明らかにした。この結果は劣化における電流輸送機構を解明したものとして学術的に価値がある。 α-Ga2O3上に3つの異なる種類の電極を形成し、熱劣化機構を評価した。Ti電極では面内で均一な劣化が起こり、Pt電極では周辺部から劣化が起こることを像として示すことができた。Fe電極では、熱処理温度の増加と共に電極の周辺部から中心に向けて線状に劣化する現象を観測した。金属が異なることにより冶金学的性質がことなることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度ははじめに、近紫外光の光源を購入し、従来までの可視光光源と合わせて測定が行えるような装置系を実現した。さらに、電気回路の工夫により試料に-45 Vまでに電圧を印加しながら測定が行える改良も行った。装置の改造は比較的短時間で終え、素子評価を早期に着手することができた。 GaN上電極の通電劣化の評価はその場観察を実現し、GaN中欠陥と信頼性との相関を明らかにしたものとして評価され、窒化物半導体の国際会議(IWN2019)でもオーラル発表として採択され、JJAPに論文が採択されつつある。 SiC上のMOS電極の通電劣化の評価は、電流輸送機構の解明が評価され、半導体材料、デバイスの国際会議(SSDM2019)に採択され、JJAPの特集号論文にも採択された。 α-Ga2O3上電極の熱劣化機構を評価した実験では、金属の酸化という現象が大きく支配的であることを示し、欧州MRS&MRS日本の合同国際会議、および4th Intensive Discussion on Growth of Nitride Semiconductors (IDGN-4)@東北大で招待講演の栄誉を得た。 このように本年度の成果は本研究課題の主要な部分を実証するものであり、十分な進捗があったものだと考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は試料に印加出来る外部電圧を45 Vから300 Vにできるよう、装置の購入を進める。さらに、測定速度を現状の2倍に出来るよう、光学系、電気系の改造も行う予定である。 GaN上電極の通連劣化においては、意図的に結晶欠陥を集めた領域をもつ結晶を用いて、電気的特性、信頼性の機構解明を進める予定である。さらに、GaN結晶に対してドライ、およびウエットエッチングを行い表面に導入された欠陥の評価も行う予定である。本手法の表面敏感性が実証出来ることが期待される。 また、共同研究者である福井大学・橋本明弘教授が遂行している、グラフェン上に高品質なGaN結晶を成長する試みが成功しつつあり、この手法で作製されたGaN結晶の評価にも本手法を応用する所存である。 対外活動においては窒化物半導体交際会議(ICNS-13@シアトル)、SSDM2019@名古屋大,応用物理学会への投稿を計画しており、更に11月に京大で開かれるIEEE CPMT Symposium Japan 2019においては招待講演の依頼を受けている。学会委員としてISCSI-8@名古屋大、ECS秋期@アトランタ、MRM2019@横浜の会議の参加、運営に携わる。これらの活動を通して本研究の成果を国内外にアピールする所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国大会、研究会への参加を大学の校務により見送ったため、未使用金が発生した。 次年度の使用計画については、今後の研究推進方策にも記入したように、装置の購入や学会参加に使用する予定である。
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