研究課題/領域番号 |
18K04231
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
原 和彦 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80202266)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 六方晶窒化ホウ素 / 化学気相法 / 薄膜成長 / サファイア基板 / シリコン基板 |
研究実績の概要 |
六方晶窒化ホウ素(h-BN)の、数インチサイズのウエハ状単結晶を作製するための基本プロセスを、化学気相法(CVD)をベースに開発することを目的としている。今年度は、まず、昨年度の研究結果を基にCVD装置の新しい結晶成長部を作製し、旧型のものと置き換えた。次いで、この新システムによる薄膜成長特性の把握と、試料の高品質化を図った。併せて、種結晶作製用基板として、これまで使用してきたc面サファイアに加えて、Si (111)ウエハへの成長も試みた。Siの融点は1414 ℃であることから高温での成長には使用できないが、膜中への酸素混入の心配がなく、高純度化の観点から種結晶の高品質化が期待される。以下に得られた結果をまとめる。 (1) 新しい結晶成長部を使用したh-BN薄膜成長:新しい結晶成長部は、コールドウォール型でW製ヒーターにより基板を加熱する。さらに、ガス流に対する基板の角度を精密に設定できることも特徴である。一方、基板温度のモニターには放射温度計を使用しているが、サファイアを基板に用いる場合には、背面から透過するヒーターの輻射が障害となり正しい温度を計測できない課題が明らかになった。そのため今年度の研究では、(2)で述べるように、Siとサファイア基板ではほぼ同様の特性が得られることを確認しているので、主にSiを基板に用いて、新システムの最適化を図った。主に成長圧力と基板設置角度依存性を調べた結果、基板傾き角が90~30度の範囲で、角度が小さいほど表面状態、発光特性とも向上することから、ガス流制御の改善が図られた。 (2) Si (111)基板上へのh-BN薄膜成長:Si基板上においてもサファイア基板と同等の膜構造のc軸配向したh-BNの成長が確認された。カソードルミネッセンス測定では固有励起子発光が観測され、Si基板上へも良質なh-BN薄膜を作製できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要(1)に記載の通り、新しい結晶成長システムは既に立ち上がって、結晶の高品質化を示す結果が得られている。一方で装置の課題として、サファイア(h-BNの場合も同様)を基板に用いる場合には、背面から透過するヒーターの輻射が障害となり正しい温度を計測できない課題が明らかになった。この課題については、次年度で基板裏面にチタンなどの高融点金属を蒸着することで、年度始めに解決できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
h-BNの結晶学的特性を考慮して考案した新しい結晶作製プロセスは、BCl3とNH3を原料としたh-BNの減圧化学気相法(CVD)法をベースとし、異種基板上への(i)低温成長→(ii)基板から剥離→(iii)これを種結晶とする高温高速成長、からなる。これらの結晶作製プロセスのうち、(i)低温エピタキシャル成長については、再成長時の種結晶の役割をもつため、面内配向の完全性が高い薄膜を得ることに注力する。今年度の研究結果から、Si基板も有望であることがわかったため、Si基板の利用も候補として取り上げ、サファイアと比較しながら研究を進める。(ii)サファイア基板からのh-BN薄膜の剥離については、剥離後から再成長までのハンドリング方法を検討する。(iii)高温再成長において高品質な結晶を高速(200 μm/h以上)で再成長可能な結晶成長条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に参加予定していた学会の開催が見送られたため次年度使用額が生じた。これについては、次年度に研究成果発表旅費として使用する計画である。
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