研究課題/領域番号 |
18K04241
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
多田 和也 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (90305681)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 導電性高分子 / 無修飾フラーレン / 非ハロゲン系溶媒 / 等価回路モデル |
研究実績の概要 |
本研究は,研究代表者が見出した非ハロゲン系溶媒である1,2,4-トリメチルベンゼンを用いることで実現されるπ共役ポリマー:無修飾フラーレン複合体を発電層とする有機薄膜太陽電池を中心として,有機太陽電池を室内光エネルギー・ハーベスティング素子として活用する際の基盤技術を構築することを目的としている。 本年度は,特に太陽電池の1ダイオード等価回路モデルにおける回路素子パラメータ抽出に関する研究に成果があった。すなわち,有機材料などの新規材料を用いた太陽電池研究ではしばしば,素子開放時と素子短絡時におけるI-V曲線の傾斜の逆数dV/dIを直列抵抗Rsや並列抵抗Rpとして表示する簡易的な方法を用いる慣習があるが,このような値が実際の回路パラメータである直列抵抗Rsや並列抵抗Rpとどのように異なるかについて,LambertのW関数を用いた表式により検討を行った。 具体的には,すでに知られているdV/dIの表式は,実際に表計算ソフトなどで計算する場合にオーバーフローしやすいという問題があることを明らかとした。これを回避するべく,新たに導いた式を用いた。数値例から,素子開放時と素子短絡時の電流-電圧特性曲線の傾きの逆数(dV/dI)と,等価回路における直列および並列抵抗の間には無視できない誤差があることと,特に素子開放時のdV/dIの変化は単純に抵抗成分に帰することができない可能性があることを指摘した。 すなわち,上記の簡易的な方法では等価回路における直列および並列抵抗を決めることはできず,曲線フィッティングなどにより決定する必要があることを示した。 有機太陽電池を室内光エネルギー・ハーベスティング素子として電子回路に組み込む際には,広い範囲の照射光強度において等価回路パラメータがどのように変化するのかを正確に知る必要がある。このような目的のために,本研究成果は役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽電池の1ダイオード等価回路モデルにおける回路素子パラメータ抽出に関する研究を行ったが,これは有機太陽電池を室内光エネルギー・ハーベスティング素子として活用する際の基盤技術の構築に資する研究結果であり,論文発表を行えたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はた非ハロゲン系溶媒である1,2,4-トリメチルベンゼンを用いることで実現されるπ共役ポリマー:無修飾フラーレン複合体を発電層とする有機薄膜太陽電池の室内高エネルギー・ハーベスティング応用に関する実験的研究を展開していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主に太陽電池の等価回路モデルに関する理論的研究に注力したため,実験装置や高価な試薬の購入を控えた。また,国際会議などへの発表に際しては別予算での補助があったため,旅費も抑えられた。次年度は実験的研究を積極的に行うとともに国際会議などにおける研究発表も行うために有効に活用する予定である。
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