研究実績の概要 |
本研究は,研究代表者が見出した非ハロゲン系溶媒(1,2,3-トリメチルベンゼン)を用いることで実現されるπ共役ポリマー:無修飾フラーレン複合体を発電層とする有機薄膜太陽電池を中心として,有機太陽電池を室内光エネルギー・ハーベスティング素子として活用する際の基盤技術を構築することを目的としている。 本年度の主要な成果として,①ベイズ推定による等価回路パラメータ抽出について,S字型のI-V特性曲線からパラメータ抽出に成功したこと,②非ハロゲン系溶媒を用いた有機薄膜太陽電池作製手法として有力な電気泳動堆積法によるπ共役ポリマー:無修飾フラーレン複合体の製膜において,各材料の仕込み量と膜中の材料の比率について明らかとしたことがある。 ①について,昨年実証したベイズ推定法による太陽電池の等価回路パラメータ抽出法を,S字型のI-V特性曲線を再現する対向2ダイオードモデルにおけるパラメータ抽出に拡張することができた。元の1ダイオードモデルが5個のパラメータからなるのに比べて,対向2ダイオードモデルではパラメータ数が8個となる。これは探索空間の次元が5から8に増えたことに相当する。目視ではほとんど違いの分からない曲線も弁別するなど,高い能力を有する方法であることが分かった。 ②について,電気泳動堆積法によるPOT-co-DOTと称するπ共役ポリマーと無修飾フラーレンであるC60との複合体を製膜する際に,懸濁液中の仕込み量と出来上がった膜とでは材料の比率が顕著に異なることを見出した。
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