サブバンド間遷移(ISBT)光デバイスの電流注入構造に着目し、ヘテロ接合における電圧電流特性について調べた。InP基板上にZnCdSeとMgZnCdSeのヘテロ接合素子を作製し、電圧電流特性を評価した。その結果、オーミック特性ではなくショトキー性が見られ、高い印加電圧の原因であることが分かった。これはZnCdSe層とMgZnCdSe層との間の伝導帯ヘテロ障壁によることが理論解析により示された。更に、ヘテロ障壁を0.3eV以下にすることでショットキー性からオーミック性に切り替わり、印加電圧の低減に繋がることが分かった。次に、ISBTデバイスの光導波路構造について検討した。コア層をZnCdSe/BeZnTe超格子、クラッド層をMgZnCdSeとして光導波特性の理論解析を行った。その結果、良好な光導波特性とコア層への充分な光閉じ込めが得られることが示された。一方、これまでのZnCdSe/BeZnTe超格子に加えMgSe/ZnCdSe超格子におけるサブバンド間遷移特性についても検討した。当該超格子におけるサブバンド間遷移波長を理論解析したところ、MgSe層厚が1~10分子層(1分子層は約0.29nm)においてZnCdSe層厚が6分子層(約1.76nm)の場合にサブバンド間遷移波長を光通信波長帯に制御できることが示された。続いて、MgSe/ZnCdSeヘテロ接合の共鳴トンネルダイオードへの応用について検討した。MgSe層を二重障壁層とし、エミッター層、井戸層、コレクター層をZnCdSeとした共鳴トンネルダイオードを作製し室温で電圧電流特性を評価したところ、明瞭な微分負性抵抗が見られた。また、同構造の理論解析を行ったところ実験結果と同様な特性が得られ、共鳴トンネル効果が得られていることが示された。
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