研究実績の概要 |
前年度は、シリコン窒化膜を構成する元素の一つであるSiに比べ、電気陰性度が低い4族元素であるHfをシリコン窒化膜に添加し、その膜を用いて作製したメモリキャパシタの電子保持特性を調べた。その結果、Hfを添加した窒化膜を有するメモリキャパシタでは電子保持特性が低下した。また、β-Si3N4結晶を構成するSiをHfに置き換えた系の第一原理計算において、Si3N4の伝導帯下端の直下に浅い準位が生成するという結果が得られ、Hf添加試料の電子保持特性の低下に対しこの浅い準位が関与している可能性が示唆された。そこで今年度は、窒化膜に深い準位を形成できる元素を探索するために、β-Si3N4結晶のSiを、電気陰性度がSiに比べて低い5種類の元素(Mg, Ti, V, Mn、Al)に置き換えた系について第一原理計算を行い、生成する欠陥準位について調べた。また、β-Si3N4結晶のNを電気陰性度が高いCl, Fに置き換えた系についても計算を行った。その結果、Mnを添加したSi3N4結晶において、電子に対する深い欠陥準位が生成することが見出された。一方、他の金属元素を添加した系では所望の欠陥準位は得られなかった。Cl, Fを添加した系では浅い準位が現れた。 次に、シリコン基板上のシリコン窒化膜-トンネル酸化膜二層絶縁膜の窒化膜に対し、3×1013 cm-2の密度でMnイオンを注入し、窒素雰囲気で750度の熱処理を加えた。その後、アルミニウムゲート電極を設けることでMn添加窒化膜を有するメモリキャパシタを作製した。その試料の室温における電子保持特性を調べたところ、比較的高いゲート電圧で長時間の電子注入を行った条件では、電子保持特性が良好であった。現在、Mn注入条件の最適化を図ったメモリキャパシタを作製中であり、試料作製後に電子保持特性向上についての検証を進める。
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