研究課題/領域番号 |
18K04245
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
木村 康男 東京工科大学, 工学部, 教授 (40312673)
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研究分担者 |
庭野 道夫 東北福祉大学, 感性福祉研究所, 教授 (20134075)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ガスセンサ / 集積化 / 陽極酸化 / 酸化チタン / ナノチューブ / TNT / ナノ構造 / 酸化物半導体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、超小型超低消費電力臭覚センサの実現に向けた半導体ガスセンサの集積化技術の確立のため、陽極酸化によって自己組織的にナノホールアレイが形成される酸化チタンナノチューブ(TNT)を用いた自立膜型微小ガスセンサを局所陽極酸化により構築する。本研究を遂行するためには、①作製プロセスの確立、②TNT内壁表面の評価分析及び制御、③ガスセンサの応答特性の評価・分析が必要である。 ①作製プロセスの確立では、自立膜を形成するために基板に微小貫通孔を開ける必要がある。基板としてガラス基板を用いた。通常のアルカリガラスは、ナトリウムを含むため半導体プロセスには適合しないので、ガラス基板の種類として(合成)石英及び無アルカリガラスを検討した。無アルカリガラスの場合、フッ酸系溶液によるエッチングの際、析出物が基板表面に付着するため均一な微細孔の形成が困難である。この析出物は、無アルカリガラス中に含まれるアルカリ希土類と溶液中のフッ素によって形成したものであると考えられる。そこで、石英基板による貫通孔形成を試みた。石英基板を用いた場合、エッチング速度が極端に遅いため、レジストが剥がれるなどのレジストの耐薬品性が課題となった。そこで、石英基板上に堆積したSiにパターンを転写し、それをレジストとすることを試みたところ、長時間のエッチングに耐え、石英基板に数十ミクロンの貫通孔を形成できることがわかった。②TNT内壁表面の評価分析及び制御では、その評価法としてMIR-IRASを用いるが、本計測を木村班でも行えるように、赤外分光器の移設を行い、大気中MIR-IRASの光学系を設計した。③応答特性の評価・分析では、新たに構築するガス供給、排気システムを備えた評価装置の設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①作製プロセスの確立では、貫通孔を有する石英基板の作製プロセスに目処が立ち、リソグラフィによるチタン薄膜のパターニングにも着手している。また、溶液セルを用いないで陽極酸化を行うセルレス陽極酸化を提案し、それによるTi薄膜の陽極酸化にも着手している。したがって、①作製プロセスの確立では、概ね予定通りである。一方、②TNT内壁表面の評価分析及び制御では、赤外分光器の移設は完了したものの、MIR-IRASの光学系が設計にとどまっているが、設計した光学系部品は既に納入されている。したがって、本項目についても、多少の遅れを生じているが、概ね予定通りである。一方、③応答特性の評価・分析では、ガス供給、排気システムを備えた評価装置を2年目までに構築する予定であり、本年度、全体の設計まで行う予定でいたがそこまで至っていない。したがって、全体では、(3)やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
①作製プロセスの確立では、計画通り、さらに(i)ガラス基板の微細孔貫通プロセスの開発及び(ii)Tiのパターニング及び局所陽極酸化技術の構築を進める。(i)においては、パターンをSiに転写することにより石英基板の貫通孔形成に成功しているが、石英基板表面に堆積したSiの欠陥が原因と考えられるエッチピットが発生してしまうことが課題である。これを改善するために、分解能は劣るが耐薬品性が優れるレジストとの組み合わせを試みる。(ii)においては、溶液セルを用いないセルレス局所陽極酸化技術を構築する。溶液セルを用いないことにより、Ti細線に欠陥を与えないことや、試料の大きさや形状が自由となる。これは既に前年度に着手しているが、使用できる溶液量が限られるため、陽極酸化できるTiの体積に制限があることがわかってきている。TNT微細センサの特性とTNTの形状との関係を調べるためにはTNT形状を制御しなければならない。そこで、次年度は、形成されるTNTの形状をFE-SEM等で観察し、陽極酸化条件とTNTの形状との関係を調べる。セルレス局所陽極酸化でTNTの形状を制御する。 ②TNT内壁表面の評価分析及び制御については、大気中MIR-IRASの光学系構築を完了させる。また、①や③と合わせ、TNT構造の違いによるガス吸着の違いなどを評価することにより、TNT微小ガスセンサの特性向上につなげる。 ③応答特性の評価・分析では、今年度、ガス供給、排気システムを備えた評価装置を新たに構築する予定であったが、そこまで至らなかった。真空排気装置は既に納品済みであるので、必要最低限の機能を厳選して装置を簡便化して設計時間を短縮することにより、早期に評価装置を組み上げる。その後は、実際の試料の測定を行う。対象ガスとして、先ず、最も基本的なガスである水素を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ガスセンサ評価用の真空排気系の立ち上げが遅れている。配管や電子部品などの真空排気系及びガス導入ラインからなるガスセンサ評価装置のための部品類の購入が済んでいないことが、次年度使用額が生じた主な理由である。ガスセンサ評価装置の主要部である真空排気装置が本年度の終わりに納品されており、次年度、計画通り、ガスセンサ評価装置の構築を継続する。生じた次年度使用額は、主にこのガスセンサ評価装置を構築するための真空・配管部品(10千円×6個)や評価のための高純度ガス(40千円×3本)の購入に充てる。次年度予算については計画通り、薬品類や溶液セル、フォトマスク、スパッタ用ターゲットなどの消耗品(700千円)、学会参加などのための旅費(350千円)、人件費・謝金(50千円)、その他(100千円)に使用する。
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