研究課題
本研究は、NMR等の超強磁場磁石に欠かせないNb3Sn超伝導線材の臨界電流特性のブレークスルーを実現するために、中間Cu-X活性層を利用した“特異”なNb3Sn拡散反応現象を発掘し、新たな機能創成につなげることを目指している。特にX元素としてZnに着目し、Nb3Sn層生成促進など、その効果を明らかにしてきた。現代の高性能Nb3Snの前駆体線材は、Nb芯/Cu母材/Sn芯の拡散対構造で構成される。2020年度は拡散挙動へのTi添加場所の影響について詳しく調査した。Tiの添加場所はNb芯、Cu母材、Sn芯の3通りが考えられ、それぞれにおいて拡散挙動が異なり、メリットデメリットがある。例えば、TiをCu―Zn母材に添加する場合には、Tiの偏析の抑制が期待される一方、Cu―Zn母材へのZn固溶が著しく制限される。そこで、Zn添加を従来の母材添加からSn芯添加に変え、Tiを母材に添加した新しい拡散対構造であるSn-Zn/Cu-Ti/Nb構造を考案し、拡散反応現象を詳しく研究した。その結果、Sn芯にTiを添加した試料に比べ、Cu母材にTiを添加した試料の方が、明らかに析出するTi-Snが微細化され、母材中に均一に分散することが明らかとなった。Nb3Sn層の生成促進にはTi-Sn化合物の微細化は必須であったが、CuにTiを添加することによって、それが実現できることを明らかにした。Sn芯にTiを添加した試料とCu母材にTiを添加した試料の臨界電流特性を比べてみると、Cu-Ti母材試料の方が特性が向上することが確認された。これは、Ti-Sn化合物の偏析が抑制されたことが大きな要因と考えられる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
IEEE Transactions on Applied Superconductivity
巻: 30 ページ: 1~5
10.1109/TASC.2020.2971451
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Journal of Alloys and Compounds
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