本研究は、SiCデバイス製造工程の低減を可能とするCVD法を用いたSiCバルク結晶成長を目的としている。R2年度は炭素部材のコーティングにより発生した新たな課題の解決に向けて取り組んだ。 炭素部材からの炭素の混入が欠陥発生の原因となっていることを発見したため、R1年度には、成長中に基板を設置する炭素部材をSiC成長において実用化されているTaCコート炭素部材に変更した。その結果、ウエハ中心部に面状で広い領域に欠陥が発生し、また、キャリア濃度分布均一性が悪化した。R2年度はこの原因について評価及び考察を行った。まず、TaCコート部材にすることにより、ウエハ外周での温度が急激に増加しており、面内での温度分布が悪化していることが分かった。TaCの反射率の高さが炉内の温度分布を変化させたことに起因していると考えらえる。また、TaCコート部材を用いたときには、ウエハの反りも増大しており、温度分布の悪化が原因であると考えられる。キャリア濃度分布については、成長条件による依存性は小さく、ウエハの反りが大きいときに悪化していることが分かり、キャリア濃度分布向上のためには、温度分布の改善が必要であることが分かった。ウエハ中心部に面状に発生した欠陥については、裏面へのデポ付着と同じ分布を有していることが分かり、反り形状による裏面へのガスのまわり込みの変化が影響していると考えられる。CVD法を用いたスパイラルモードによるエピタキシャル成長において、欠陥抑制かつキャリア濃度分布向上を実現するためには、温度分布を悪化させないコート材の探索やTaCコート使用時の温度分布の改善の検討が必要である。
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