研究実績の概要 |
超伝導ナノ細線を用いた単一光子検出器(SSPD,SNSPD)は、近年飛躍的な性能向上を果たしたが、動作温度が3K以下と低い。本研究課題では20Kで動作するSSPDの実現を目指している。このために、超伝導材料として高いTcを有する2ホウ化マグネシウム(MgB2, Tc=39K)および銅酸化物超伝導体(La1.85Sr0.15CuO4, Tc=37K)を用いる。MgB2は、SSPDに必要となる5nm程度の極薄膜では膜質が劣化してTcが大幅に低下することが課題である。La1.85Sr0.15CuO4は100nm程度の微細化技術が確立していない問題点がある。 平成30年度は、既に成長済みのMgB2極薄膜およびLa1.85Sr0.15CuO4極薄膜を用いてSSPDを試作した。今回から本素子の微細加工を北海道大学ナノテクノロジ―連携推進室において実施するため、従来の加工プロセスを変更する必要がある。ネガレジストパターンからポジレジストパターンへの変更、窒化アルミニウム(AlN)保護膜から酸化アルミニウム(Al2O3)保護膜への変更、臭素ドライエッチングからアルゴンイオンミリングへの変更等を行い、線幅200nmまで劣化の無い微細化が可能となった。更なる微細化に向けて条件の最適化を進めている。また、微細化プロセスの簡略化・容易化を目指して、簡易アライメントマークを用いた新しい素子構造の開発、および、より太い細線を用いた光子検出の可能性について検討を進めた。MgB2極薄膜の高品質化について、MBE装置の移設と立ち上げを速やかに行い年度内に成長を開始する予定であったが、装置移設が3月になったため現在立ち上げ中である。
|