研究課題/領域番号 |
18K04255
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
柴田 浩行 北見工業大学, 工学部, 教授 (60393732)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 単一光子検出器 / 2ホウ化マグネシウム / 銅酸化物超伝導体 / SSPD / SNSPD |
研究実績の概要 |
超伝導ナノ細線を用いた単一光子検出器(SSPD, SNSPD)は、近年飛躍的な性能向上を果たしたが、動作温度が3K以下と低い。本研究課題では20Kで動作するSSPDの実現を目指し、2ホウ化マグネシウム(MgB2, Tc=39K)および銅酸化物超伝導体を用いたSSPDの開発を進めている。 令和元年度は、昨年度移設したMBE装置・フォトリソグラフィー装置の立ち上げ、MgB2極薄膜成長、微細化による線幅削減、について研究を進めた。MBE装置を用いて、膜厚10nmでTc=20KのMgB2極薄膜が再現性良く成長可能となった。また、昨年度は微細加工を全て北海道大学ナノテクノロジー連携推進室の装置を利用して実施したが、我々の研究室でもフォトリソグラフィー装置を用いたミクロンサイズの微細加工が可能となった。一方、電子線描画を用いたナノ加工プロセスでは、線幅100nm以下でArイオンミリングダメージによる超伝導特性の劣化が生じた。現在、極薄膜成長後にin-situ成膜した酸化アルミニウムを保護膜に利用しているが、ミリングダメージに弱いと考えられ他材料を検討している。最近、1nm以下に集束したHeイオンビーム照射により材料を改質して微細加工を行う新しい手法が開発された。本研究においても更なる微細化には本手法が有効と考え、当手法の微細プロセスを大阪大学ナノテクノロジー設備共用拠点の装置を利用して開始した。実験結果とイオン注入シミュレーション結果を比較検討することにより、SSPD微細化に向けた条件の最適化を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置立ち上げに時間が掛かり、全般的に遅れが生じている。電子線描画による微細プロセスは、線幅100nm以下の再現性に問題が生じた。問題解決のため、保護膜の再検討と共に、新たにHeイオン顕微鏡による微細プロセスを開始して、現在微細加工条件を詰めている段階である。膜厚10nmでTc=20KのMgB2極薄膜は再現性良く作製可能となったが、膜質(Tc)向上に関する研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
MgB2極薄膜の膜質(Tc)向上について、in-situアニール処理を検討する。イオンミリングダメージ削減のため、保護膜として酸化マグネシウム、二酸化ケイ素等の可能性を検討する。並行して、大幅な微細化が期待できるHeイオン顕微鏡による微細プロセスを推進する。線幅40nmまで微細化すると、作製済みの膜厚20nm(Tc=30K)のMgB2薄膜を利用することが可能となり、膜質向上無しでも動作温度の20K化が期待できる。La1.85Sr0.15CuO4においてもHeイオン顕微鏡による微細化を進め、高温における単一光子検出を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大のため、応用物理学会春季学術講演会および電子情報通信学会2020年総合大会が中止となり旅費が不要になると共に、中国製物品の納入が4月に延期されたことが原因である。令和2年度における学会発表旅費に使用する。
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