4枚の平板電極からなるシンプルな結合器構造による海中でのワイヤレス電力伝送の実現を目指している。この方法はシステムの軽量化に適しており、またフェライトや金属による遮蔽も不要であるため主に移動体への給電技術として有効であると考えられる。ただ、平板電極間に発生する電界を使って送電しようとすると、海水の高い導電率によるQ値の低下から高効率電力伝送が困難である。そこで、本研究は海水中での電極表面に発生する電気二重層に注目して研究を進めてきた。 これまでに、電気二重層を使用した場合は約10 kHzの低周波で電力伝送できる一方、RF-RF伝送効率80%以上を維持できる送電距離は5mm程度であることを明らかにした。海中では容量性結合を介した電力伝送経路のほか、海水の導電性結合による電力伝送経路が存在することも発見した。そして、昨年度までに水中に常設する給電ステーションに設けたクッションダンパーを利用することで、高効率化を達成しただけでなく位置ずれにも強い結合器構造を実現した。クッションダンパーで囲われた範囲内であれば、平板電極が完全に正対していなくても淡水・海水に関わらず伝送効率90%以上を達成した。さらに、同じ結合器を用いて水中ドローンに搭載したカメラの動画をリアルタイムでノートパソコンへ伝送できることも実証した。 上記成果をもって研究期間内に掲げたタスクはすべて完了したが、コロナの影響で実験部材の入手・実験データの取得および整理に時間を要したため、今年度はその成果発表を実施した。
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