研究課題/領域番号 |
18K04264
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
松嶋 徹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00571415)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EMC / 妨害波イミュニティ / Transmission line pulse / コモンモードフィルタ |
研究実績の概要 |
ネットワークを介して、小型センサーなどの観測データが集約され利用されるIoT技術が進んでいる一方で、小型化されたパワーエレクトロニクス機器がネットワーク近傍に配置されることも多い。パワーエレクトロニクス機器のスイッチング速度の高速化により、これらの機器が発する妨害波も数十MHzから数百MHzの高周波域に達している。このような妨害波は、鋭いピークを持ち、回路の共振により特定周波数で減衰振動する波形であることが知られている。鋭いピークを持つパルス波形と特定の共振周波数での減衰振動波形とでは、ICのイミュニティ特性への影響も異なると推測され、それらの特徴を持つパルス波を用いたイミュニティ試験が望まれる。 今年度の成果としては、パワーエレクトロニクス機器が発する妨害波を模擬し、IC/LSIへ試験用妨害波として印加する装置について検討し、伝送線路と高速スイッチからなるTLP(Transmission line pulse)生成装置を開発した。 開発した装置では安価なスイッチを用いて数n秒程度の立ち上がり時間を持つパルス波を生成できる。今後、回路素子を付加することで任意の試験用妨害波パルスを生成する設計法について検討する。 また、デバイスの評価法として、コモンモードフィルタと呼ばれる素子に着目し、性能評価のための高速解析手法を構築した。この評価手法では、コモンモードフィルタの同相モード(コモンモード)伝搬抑制だけでなく、信号伝搬モードであるディファレンシャルモードとのモード変換特性も考慮し、妨害波として外部へ放射するエミッションだけでなく、イミュニティ性能の評価にも用いることが出来ると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的であったTransmission line pulseの生成回路は概ね完成しており、さらに任意の妨害波波形を生成する回路について検討している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討したTLP生成装置を発展させ、スイッチング素子が発する妨害波のように急峻な立ち上がりと減衰振動からなる妨害波の生成方法を検討する。さらに、実際に生成した妨害波をプリント回路基板に実装したコモンモードフィルタやIC/LSIに印加し、イミュニティ(ノイズ耐性)性能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた年度末の出張(学会の全国大会他)が中止されたことや、他機関で予定していた実験を代表者の期間で実施したことにより出張費が発生しなかった。一方で、実験器具(試験基板作製など)の購入を追加で行ったため物品費は増額している。
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