研究課題/領域番号 |
18K04267
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
田中 愼一 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00556243)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 整流器 / 整流回路 / エネルギーハーベスティング / GaN / マイクロ波 / ダイオード / FET / 時間反転双対性 |
研究実績の概要 |
RFエネルギーハーベスティング(RF-EH)に向けてダイオード型整流器とFET型整流器を検討した。 1)ダイオード整流器 直列インダクタとダイオードの寄生容量を共振させることで、ダイオードの閾値電圧を実効的に下げるだけでなく無反射を実現する新しい原理を見出し、動作実証を行った。閾値電圧が下がるのは直列インダクタの誘導起電力の効果だが、インダクタを単純に装荷するだけでは効果はなく、共振することで初めてダイオードのON・OFF切替タイミングで共振電流の振幅が増し、有効な誘導起電力に繋がる。また同時に共振のQ値を最適に制御すればダイオードでの反射と負荷側回路での反射の波が補償されることも見出した。これは従来整流器では全反射されてしまう微弱電波を無駄にすることなく利用できることを意味し、RF-EHに向けて有用な動作機構である。安価な汎用ミキサダイオードを用いる実証実験で、700MHz帯にて-20dBm/-30dBmのRF入力電力に対して38%、15%という最高レベルのRF-DC電力変換効率を実現した。 2)FET整流器 FET整流器はFET増幅器と回路構成が似ているが、時間反転双対性の原理により増幅器とは逆にRFをDCに変換することができる。ここでドレインからRFを入力する際、ゲートに別途RFを入れる必要はなく、ゲート側回路が最適化されていればFET動作がドレイン側とゲート側とで同期する。このようなゲート側回路を実現するには高調波のインピーダンスをも最適化する必要があるが、そのため従来の設計方法では回路が大型化する課題があった。今回、我々がこれまで提案してきた負次数の共振モードを用いる不均等セル構成のCRLH線路をゲート回路に用いることで、回路面積を1/10に縮小できることを確認した。電波整流器の超小型化は、近い将来普及が見込まれる無数の小型IoTセンサを安価に製造する上で不可欠である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では、ダイオード整流器、FET整流器のうち、一方の検討の進捗が思わしくなかった場合にもう片方について検討を進める計画であったが、両方の検討で成果が得られた。また、当初は今年度は基本原理の検証までという計画であったが、いずれも実用的な回路を用いて実証実験するところまで進捗を得ることができた。ダイオード整流器およびFET整流器の2018年度成果は、それぞれIEEE Wireless Power Transmission Conference 2018(発表済み)、European Microwave Conference 2019(発表予定)というマイクロ波分野において権威のある国際学会に論文を投稿し採択された。
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今後の研究の推進方策 |
ダイオード整流器、FET整流器のいずれについても、より実用性を高める研究を推進していく。 (ダイオード整流器) 2018年度に実証したダイオード整流器は共振を利用しているため、動作帯域がやや狭い点が課題である。そこで異なる共振周波数のダイオードを組み合わせるなどの方策により、今後は高感度と広帯域を両立させる検討を進めていく。既に基本シミュレーションでは有望な結果が得られており、地上デジタルテレビ放送の400-700MHz帯をカバーする高感度整流器の実現を目指す予定。 (FET整流器) 2018年度に実証したFET整流器はゲート側回路にCRLH線路を適用したが、ドレイン側は従来の設計手法を採用している。そこで2019年度はドレイン側にもCRLH線路を適用し、高調波処理回路を施すことで、整流器全体としての一層の小型化と高効率化を実現していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は事実上ゼロである。僅かな金額でも無駄にせず、次年度の活動の糧にしたい。
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