研究課題/領域番号 |
18K04270
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
奥村 万規子 神奈川工科大学, 創造工学部, 教授 (30329304)
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研究分担者 |
安部 恵一 神奈川工科大学, 創造工学部, 教授 (50795945)
三栖 貴行 神奈川工科大学, 創造工学部, 教授 (80570572)
杉村 博 神奈川工科大学, 創造工学部, 准教授 (80647503)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サッカード / ラインディスプレイ / LED |
研究実績の概要 |
2020年度は,高速に点滅するLED列を,サッカードと呼ばれる眼球運動中に視線が通過すると,情報を知覚することができるラインディスプレイに関して,LED64個の256階調表示可能なラインディスプレイを開発し,2種類の主観評価実験を行った.1つは知覚感度に関する実験で,知覚感度補正を行うことにより画像の知覚が向上することがわかった.もう一つは空間周波数に関する実験で,表示画像の空間周波数による知覚への影響は二次元ディスプレイと似たようなの傾向で,0.35[c/deg]~0.75[c/deg]付近が知覚に適していると分かった. また,別の回路構成で,点滅周期のさらなる高速化を図るラインディスプレイを開発した.16ビットCPUのPICマイコンと100ピンのCPLDを用いて,64個のフルカラーLEDを高速に駆動した.最速で1ライン20[μs]の点滅が可能となったことで,より多くの情報を提示することができるようになった.本ディスプレイは階調はPWM波形を生成することで実現し,16階調まで表示できる.点滅周期と最適な視覚距離を実験で評価したところ,画像を知覚しやすい最適な点滅周期と距離の関係は点滅周期が速いほど距離が遠く,点滅周期が遅いほど距離が短いことが分かった.これらは,光源の幅と関連づけた理論的な解釈とほぼ一致することがわかった. また,認知心理学で得られている単眼性の奥行き認知の視覚的特性が本ディスプレイ上でどのように視認されるか主観評価を行った.その結果,空気遠近法や線遠近法では,ランディスプレイで奥行きの知覚を確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月~5月まで,コロナ感染予防のため,大学内の入校が禁止となり,実験をすることができなかった.6月以降も夜間の実験が禁止されていたため,屋外の暗い環境で実施する実験が,17時ごろに暗くなる秋以降にしかできなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したラインディスプレイを用いて知覚しやすいコンテンツの評価と検討,さらには,ドイツのPupil lab. が開発したアイトラックを用いて,知覚中の眼球運動を計測することで,本ディスプレイの知覚原理や知覚条件を明らかにする.具体的な計画は以下の通りである. ① 3次元情報を知覚させるためのコンテンツの作成(2021年5月~2022年3月):認知心理学を考慮したコンテンツ作成に加えて,既存の3次元テレビの表示方法でラインディスプレイに応用できる手法がないか検討する. ② アイトラックによる眼球運動の測定(2021年5月~2022年3月):サッカード運動中の眼球運動と知覚状況を調査し,サッカード制御型ラインディスプレイの知覚原理を明らかにする. ③ 大型ラインディスプレイの効果検証(2021年5月~2022年3月):2m以上の大型ラインディスプレイ装置を建物の柱に複数配置し,サッカードを一方向に誘発することにより,大きな空間で動きのある情報提示を行う.さらに,奥行きを持たせて配置することにより,より立体的な空間を実現する.実際に試作し,その効果を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月~5月まで,コロナ感染予防のため,大学内の入校が禁止となり,実験をすることができなかった.6月以降も夜間の実験が禁止されていたため,屋外の暗い環境で実施する実験が,17時ごろに暗くなる秋以降にしかできなかったため,研究に遅れが生じてしまった.2021年度は2件の学術論文の投稿の予定があり,論文掲載料に充てる予定である.また,アイトラックでの測定用パソコンを購入する予定である.
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