研究実績の概要 |
本研究では,衝撃波・パルス電界の併用によるヒト細胞への外来物質導入とそれを可能にする圧電体を用いたデバイス・システムの開発を目的に、市販のエレクトロポレーション用キュベットを用いた汎用システムを開発した。これまで我々はヒト培養細胞を用いて開発したシステムの効果を検証してきた。令和2年度は、従来方法と比較するために、このシステムを酵母(S. cerevisiae)にも適用して、その効果を調べた。以下に得られた知見を示す。 実験に使用するS. cerevisiaeは、 市販乾燥酵母をYPD液体培地中で34℃、24時間培養後に遠心して回収し、氷冷したリン酸緩衝食塩水(PBS)で懸濁して実験に使用した(培養後の菌体濃度は5×107 cells/mL程度)。蛍光標識(FITC dextran)を加えた終濃度0.1 mMの懸濁液(1 mL)からエレクトロポレーション用キュベットに0.2 mL分注してパルス電界を印加した(1 mL for 5 samples)。実験では、単発ミリ秒パルス印加(設定値 1kV/cm, パルス幅5 ms)、10発ナノ秒パルス印加(設定値32 kV/cm, パルス幅280 ns)、およびこれらの組み合わせ(印加の順番が異なる2通りの組み合わせ)を試した。蛍光顕微鏡観察の結果から、ミリ秒パルス電界印加において蛍光強度の増加がみられた。また、ナノ秒パルス電界印加において、多くの菌体で自家蛍光の増強が見られた。トリパンブルーを用いた生死評価では、パルス電界印加の有無にかかわらず生菌数の割合は80%程度であった。
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