研究課題/領域番号 |
18K04272
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
山中 公博 中京大学, 工学部, 教授 (50609229)
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研究分担者 |
田口 博久 中京大学, 工学部, 教授 (30453830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液体金属 / 低温実装 / 接合部 / 半導体 |
研究実績の概要 |
はんだ材料に「常温で液体の金属Ga(融点約30℃)」を用い、「低温(50℃以下)実装でき、かつ、熱疲労破壊しないはんだ接合部」を創成することが目的である。主に、「脳コンピュータ等の次世代ロジック半導体」や「車載用等のパワー半導体」の接合技術への応用を視野に入れている。 この研究で解決する課題は、ロジック半導体において「微細化が加速するフリップチップ接合部」やパワー半導体において「高温化が加速する接合部」の本質的な信頼性課題である「熱疲労サイクル寿命」をなくす(長くする)ことである。 本研究では、接合材料として必須であるが、まだ先例がない1.Gaの電気抵抗の温度特性と過冷却特性、2.Gaと電極(Cu、Ni、W)界面の高温保持時の反応挙動、さらに、3.近年問題になっているエレクトロマイグレーション挙動 を明らかにすることを目指す。 平成31年度は、次の成果を得た。 1.Gaの電気導電率特性を、車載用まで考慮した広い範囲で,同一サンプルで連続計測する方法を明らかにした。 2.Gaと電極材料(Cu、Ni、W)の界面挙動について、前年度の150℃に加えて200℃の高温放置試験を実施し、長期信頼性の決め手になる「界面に形成される金属間化合物」と「電極の溶解」について明らかにした。 3.溶解しない電極構造の可能性があることを示した。 4.Gaで低温形成できる固体接合部の構造を明らかにした。また,形成プロセスの一部の可視化に成功した。 なお、1と2は計画項目、3と4は計画外項目である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度の成果である「Gaの電気導電率特性」と「Gaと電極材料の界面挙動」は計画通りの成果である。しかし,Ga合金についての研究は評価途中であり,計画より遅れている。一方、計画外であるが、「溶解しない電極構造」の可能性を示せたことは大きいと考える。また,「固体接合」の低温実装可能性を示せたことも大きい成果である。以上より、「(2) おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
原案に示した計画を進めたいが,現状は,新型コロナウイルス感染症が原因で,学生は大学登校禁止であり,すべての試験が停止している。夏以降,即座に試験開始ができ,比較的短時間で成果がでることを念頭に,次のように研究内容を一部変更する。 1.「Ga-Sn合金」と「Ga含侵Cu」に対しては停止し,次年度以降の実施とする。 2.代わりに,「Ga-Ga電極間のエレクトロケミカルマイグレーション(ECM)の基本特性を明らかにする」を進める。これは,原案外であるが,液体金属では全くの未評価で,重要な項目であり,1.の項目より比較的短時間で成果が出ると思われることが理由である。Cu-Cu電極間との比較を実施し,電極間の短絡までの挙動や時間等の温度・電圧依存性を明らかにする。 3.「Ga/電極のエレクトロマイグレーション(EM)の基本特性を明らかにする」を,原案より実験水準を少なくして進める。 4.原案外であるが、今回見出した「溶解しない電極構造」について、高温放置試験を実施し(一部実施済み),界面反応の信頼性を評価する。なお,原案外の「低温固体接合」の研究は次年度以降の実施とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,新型コロナウイルス感染症のため,3月の学会がなくなり,使用額が7万円ほど少なくなった。次年度は,学会参加を含め,鋭意活動する予定である。
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