研究課題/領域番号 |
18K04274
|
研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
梶 貴博 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (40573134)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 電気光学ポリマー / テラヘルツ波発生 |
研究実績の概要 |
超大容量・超高速の無線通信や非接触・非侵襲での物体センシングの実現に向けて、広帯域・室温動作の連続波テラヘルツ光源の開発が求められている。電気光学ポリマーは、テラヘルツ波の発生効率が高く、また超広帯域でのテラヘルツ波の発生が可能であるとともに、微細加工プロセスを用いたデバイス作製が可能であることから、テラヘルツ波発生デバイスへの応用が期待されている。本年度は、電気光学ポリマーを用いた連続波テラヘルツ波発生デバイス作製の前段階として、電気光学ポリマースラブ導波路とシクロオレフィンポリマークラッドから成る新規なパルステラヘルツ波発生デバイスの作製を行った。波長1.55マイクロメートル帯のフェムト秒ファイバーレーザーを2つの直交するシリンドリカルレンズを用いて電気光学ポリマースラブ導波路デバイスに照射することでテラヘルツ波の発生に成功した。この結果は、小型の低出力フェムト秒ファイバーレーザーを用いて電気光学ポリマー導波路デバイスからテラヘルツ波発生を実証した初めての結果である。得られたテラヘルツ波スペクトルには、結晶性の非線形光学材料を用いてテラヘルツ波発生を行った場合に見られる結晶格子振動に起因するスペクトルギャップが見られず、電気光学ポリマー導波路を用いることでスペクトルギャップフリーのテラヘルツ波発生が可能であることが示された。また、連続波テラヘルツ波発生デバイスの評価に向けて、連続波テラヘルツ分光装置の構築を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
連続波テラヘルツ波の発生とその検出は、ポンプ光源としてピーク強度の大きなフェムト秒パルスレーザーを用いたパルステラヘルツ波の発生とその検出と比較して難易度が高く、段階を踏んで着実にデバイス開発を進めるため、H30年度はパルステラヘルツ波発生デバイスの開発に注力した。そのため、研究の進捗はやや遅れている。しかしながら、パルステラヘルツ波発生デバイスの作製プロセスは連続波テラヘルツ波発生デバイスの作製プロセスと共通する部分が多いため、得られたデバイス作製の知見を生かすことで連続波テラヘルツ波発生デバイスの開発を今後進めることが可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に実施したパルステラヘルツ波発生デバイスの作製と評価で得られた知見を生かすことで、連続波テラヘルツ波発生デバイスの作製と評価に向けて研究を進める計画である。具体的には、電気光学ポリマースラブ導波路と金属・金属テラヘルツ波導波路構造等を組み合わせた新規なデバイスを試作し、パルステラヘルツ波発生のさらなる高効率化を目指すとともに、パルステラヘルツ波発生の実験から得られた知見を生かすことで、連続波テラヘルツ波発生の実現に向けてデバイス構造の改良を行う計画である。また、実験の初期段階における微弱な連続波テラヘルツ波の検出に向けて、連続波テラヘルツ波発生デバイスの評価装置の改良についても進める計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費の残額として若干の次年度使用額が生じた。光学部品等の購入に使用する計画である。
|