研究課題/領域番号 |
18K04286
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
渡邉 俊夫 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (90524124)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 光スイッチ / 光導波路 / 光回路 / 位相アレイ |
研究実績の概要 |
光ファイバー通信システムにおいて、光信号の経路を切り替えるために用いられる導波路型光スイッチの大規模化が求められている。光スイッチを大規模化するには、従来用いられてきた1×2のマッハ-ツェンダー干渉計型光スイッチ素子の代わりに、1×Nの位相アレイ型光スイッチ素子を用いる構成が有効である。しかし、これまでに報告されている位相アレイ型光スイッチ素子は消光比が20-30 dB程度にとどまっており、実用的な光スイッチとして十分でないという課題があった。従来の1×N位相アレイ型光スイッチ素子において、各アレイ導波路への光パワー分配比はフラウンホーファー回折によるガウス分布であることが前提とされていた。それに対して、本研究では、光パワー分配比をガウス分布とは異なる分布に設定することにより、消光比を40 dB以上に向上し、それを用いた大規模な光スイッチの光回路設計を確立することを目的としている。 本研究の2年目にあたる令和元年度においては、前年度に引き続き、各アレイ導波路への光パワー分配比を適切に設定することによるクロストークの低減について検討した。その結果、従来に比べて簡易に、各出力光導波路へのクロストークを評価できる計算方法を導出した。さらに、位相アレイ型光スイッチ素子と同様に、並列に配置された位相シフタ群で構成される複合干渉計型光スイッチ素子についての検討を行い、線対称に配置した位相生成カプラを用いることにより、広い波長範囲にわたって消光比が高い光スイッチを実現できることを示した。 これまでの研究成果は、学術論文誌(Japanese Journal of Applied Physics)1件、国際会議(Microoptics Conference)1件、国内会議(応用物理学会学術講演会)2件で発表済みであり、さらに学術論文誌に1件掲載予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2年目である令和元年度の当初計画は、(1) 光回路の製造時に設計との誤差が生じた場合の光学特性への影響を検討する。(2) アレイ導波路に位相誤差が生じた場合の位相シフタの設定、調整方法を検討する。(3) これにより、1×N光スイッチ素子の光回路設計を確立する、というものであった。 本研究においては、これまで出力側スラブ光導波路の出力端における光分布を計算することでクロストークを評価してきたが、本年度は、従来に比べて簡易に、各出力光導波路へのクロストークを評価できる計算方法を導出した。この方法により、光回路の製造時に設計との誤差が生じた場合の光学特性への影響を検討した。その結果、誤差の影響が比較的大きいことが判明したため、代替の構成として、位相アレイ型光スイッチ素子と同様に、並列に配置された位相シフタ群で構成される複合干渉計型光スイッチ素子についての検討を行うこととした。複合干渉計型光スイッチ素子はマッハ-ツェンダー干渉計を入れ子構造で複合させたものであり、方向性結合器の結合率や位相シフタの光路長差に波長依存性があるため、広い波長範囲で高い消光比を得ることは困難であるという課題があった。しかし、今年度の本研究において、線対称に配置した位相生成カプラを用いることにより、波長1450 nmから1650 nmにわたる範囲において30 dB以上の消光比が得られることを示した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる令和2年度の当初計画は、(1) 1×N位相アレイ型光スイッチ素子を集積化してM×M光スイッチ(Mは、M~256の整数)を構成する場合、光学特性が最適となる光回路構成を求める。(2) 光導波路プラットフォームの制約条件(曲げ半径など)を考慮し、1×N位相アレイ型光スイッチ素子を集積化したM×M光スイッチの具体的な光回路レイアウトを検討する。(3) これにより、1×N位相アレイ型光スイッチ素子を用いたM×M光スイッチの光回路設計を確立する、というものである。現在まで、研究はおおむね順調に進展していることから、当初計画どおり研究を遂行していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内学会が開催中止となったため。 次年度も国内外の学会の開催の見通しが不透明なため、シミュレーター保守の充実にあてることを計画している。
|