研究課題/領域番号 |
18K04293
|
研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
宮城 光信 仙台高等専門学校, その他, 名誉教授 (90006263)
|
研究分担者 |
岩井 克全 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (10361130)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 中空ファイバ / 赤外レーザ光 / 先端機能デバイス / レーザ治療 |
研究実績の概要 |
赤外レーザ光を用いる新しい手法である、大腸のポリープ除去治療では、大腸壁表面での水分による吸収が大きいため、大きなレーザパワーが必要であり、また内視鏡治療のためには半径15 mm程度の曲げに耐える伝送路が要求される。しかし、現存の伝送路では対応できない。 本研究では、この目的も含め、体を全く傷をつけず、従来にない新規な「無侵襲」治療を実現するため、低出力でも優れた切開能力を有するEr:YAGレーザ光と、止血能力のある高出力CO2レーザ光を同時伝送可能な光学膜内装銀中空ステンレスファイバの導入を提案し、細径(内径0.3 mm)で急峻に曲げることができ、しかも破断のない、従来にない無侵襲志向の内視鏡用高信頼性中空ステンレスファイバシステムの実現を図る。 平成30年度は、内面平滑化膜内装細径銀中空ステンレスファイバ先端素子の製作と評価を行った。 ステンレスチューブの内面粗さによるファイバの伝送損失を抑制するために、ステンレスチューブ内面に平滑化膜を形成し、その後、銀膜を成膜する手法は、内面平滑化膜に光学膜材料の環状オレフィンポリマー(COP)樹脂を用いており、付着力に課題があった。そこで、内径0.3 mm、長さ30 cmのステンレスチューブに、内面平滑化膜材料として、新たに付着力に優れたシリコンアクリル樹脂膜を導入し、銀中空ステンレスファイバ先端素子の製作を行い、評価を行う。また内面平滑化用最適シリコンアクリル樹脂溶液の選択として、ステンレスチューブとの付着力、銀膜との付着力、耐久性の観点から最適なシリコンアクリル樹脂溶液を選択する。市販の内径0.3 mmステンレスチューブは細径のため、内面研磨は不可とされている。そこで、研磨剤を送液することで、細径ステンレスチューブの内面を研磨可能かどうか検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、内面平滑化膜内装細径銀中空ステンレスファイバ先端素子の製作と評価を行った。 内径0.3 mm、長さ7 cmのステンレスチューブに、内面平滑化膜材料として、新たに付着力に優れたシリコンアクリル樹脂膜を導入し、銀中空ステンレスファイバ先端素子の製作を行い、評価を行った。 シリコンアクリル樹脂膜の成膜により、波長1 μmにおいて約2 dB程度伝送損失を低減できることが分った。更なる低損失化を図るために、内径0.3 mm、長さ30 cmのステンレスチューブに、研磨剤を送液し内面研磨を行った。粒子径3 μmの研磨剤を用いて約4時間の研磨を行うことで、波長1μmにおける伝送損失は、約6 dB低減し、その後、粒子径1 μmの研磨剤を用いて約3時間の研磨を行うことで、波長1μmにおける伝送損失を約2 dB低減することに成功した。その後、銀鏡反応を用いて、銀膜を成膜し、細径銀中空ステンレスファイバ先端素子を製作した。伝送特性は、波長1 μmにおいて12.5dB程度であった。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、内面平滑化膜内装細径銀中空ステンレスファイバの製作と評価を行う。 平成30年度の研究成果を基に、シリコンアクリル樹脂膜(内面平滑化用)内装細径中空ステンレスファイバの長尺化を図る。具体的な手段、方法およびその内容は下記のとおりである。 (1) 内面平滑化用シリコンアクリル樹脂膜のコーティング技術の開発 細径中空ステンレスファイバ(目標長さ1m)に対してシリコンアクリル樹脂内装コーティング技術を確立する。送液速度、乾燥条件など成膜条件を明らかにする。 (2) 高信頼性シリコンアクリル樹脂平滑化膜内装細径中空ステンレスファイバの評価 可視~近赤外波長損失特性の測定を行う。
|