研究課題
光通信用の光変調器として強誘電体(ニオブ酸リチウム)を用いた変調器が開発されているが、小型化(特に導波路小径化)では、ニオブ酸リチウムの加工技術上の問題からこれまで大きな進展はなく、同時に変調用電極間隔を低減し高電界を得る事にも困難があった。高電界化の困難から高効率な光変調も容易でなく、変調器長の長尺化で必要な変調性能を得ていた。長尺導波路への変調電界印加には(光への有効な電界印加のため)、進行波型電極を用い、50Ω終端も使用するため、変調器全体の消費電力も大きい。そこで、本研究ではシリコン・フォトニクスとの融合技術を提案し、変調器小型化を検討してきた。小径・短尺シリコン・スロット導波路とニオブ酸リチウム基板を融合し、ニオブ酸リチウム基板への高電界印加を実現し、導波光に高効率な変調が可能であることを解析で明らかにした。変調器小型化は進行波電極も不要にする。今回は、本研究の推進で鍵となるシリコン・スロット導波路および他構造のシリコン導波路について導波特性を解析し国際会議(The 24th MicroーOptics Conference (MOC2019),Toyama,Japan,17ー20 Nov.,2019,Paper No.Cー5)で報告した。
2: おおむね順調に進展している
提案シリコン・フォトニクス融合型の光変調器の高性能化では、融合するシリコン・スロット導波路の高性能化が重要であり、シリコン・スロット構造の導波光特性を本助成で入手した解析設計ツールを活用し解析するのが順調に進展したため。解析・評価データは、前回および今回の国際会議で報告したが、その他の評価解析部分についても次年度以降、論文等で発表していく予定である。
提案シリコン・フォトニクス融合型の光変調器各部の性能向上を引き続き行い、全体性能を向上させる。これらの解析・評価データを順次発表していく。また、スロット導波路以外の導波構造も解析し、高効率な光変調器実現へ向けた融合技術を探索する。さらに、提案した光変調器は単独でも高性能であるが、今後大きな発展が見込まれている光コヒーレント通信へ向けた応用として、直角位相振幅変調(QAM)を実現するシリコン集積デバイスを検討している。振幅と位相を制御し、情報を双方に乗せた高い周波数利用効率のQAMは、無線通信で実現され、現在光通信でも大きく発展しつつある。提案した光変調器についてもシリコン・チップに集積可能なQAM構成を提案し、次年度以降に発表していく予定である。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)