研究課題/領域番号 |
18K04294
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
富田 勲 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40611637)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光変調器 |
研究実績の概要 |
高周波電界印加に対して高速応答する優れた電気光学特性を有するLiNbO3を利用した超高速光通信用変調器が開発され、変調方式無依存性、低光損失性、低光雑音性が顕著であり、高い信頼性を持った超高速光通信デバイスとして地位を確立した。ただし、小型化に関しては、LiNbO3の微細加工が容易でないことから進展の停滞が見られたものの、最近では薄膜LiNbO3(スパッタ膜でなく結晶薄膜)をドライエッチングした導波路型小型光変調器が開発され、マイクロオプテックス・デバイスとして注目を集めている。一方、半導体テクノロジーでは高精度の微細加工技術が確立されており、これを用いたSiパターニング、光導波路形成、ドープされたSiを電極として活用し、LiNbO3を接合したSi/LiNbO3融合型光変調器を提案して特性研究を進めてきた。提案した光変調器の各種基礎特性(変調効率、電極性能、最小印加電圧)を解析評価し、高性能性を検証した。産業応用も視野に入れ、fin構造の簡易化も含め、パターニング容易な構造を提案し、変調器性能を研究報告した(“LiNbO3/Si-hybrid slot-waveguide electrooptic modulator designs for 1550 nm”, The 26th Micro-Optics Conference(MOC2021),Paper No.PO-9 (2021),online)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案したSi/LiNbO3融合型光変調器の基礎特性評価を計画通り実施し、高性能性を明確化し報告したため。さらに電極構造に関して、導波路の光伝搬時に提案構造と新規考案した構造の効果を本助成で取得した解析設計ツールを活用し成果を得た。研究期間がコロナ関係で延長されているが、順調に研究進展していると言える。評価性能に関する成果を国際会議、学術論文で発表してきた。これらに加えて、期間延長で当初の計画を超えて新規提案した部分に関して、解析評価結果を順次発表していく。
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今後の研究の推進方策 |
提案Si/LiNbO3 融合型光変調器では、高屈折率SiとドープしたSiスロット構造(電極)を活用し、印加電圧低減や光閉じ込め効率増大といった静的特性に関して良好な成果を得た。これに加えて、変調周波数のような動的特性が良好であることが超高速光通信用変調器として重要であるため、動的特性に関して定量的データを積み重ねていく。変調周波数に関しては、本変調器ではCR回路と等価部分があり、CR時定数が周波数上限を律速する。これを改善し周波数向上する。方法としてスロットSi構造のドープ量調整、あるいはMOSトランジスターのゲート構造に類似した構造を活用しキャリア量増大し、抵抗値Rを改善、CR時定数を低減する。ただし、光導波路付近でドープ量過多であると、導波光吸収の増大で変調性能が劣化するため、変調ドーピングを活用し、導波路から離れる方向に向かってドープ量増大し、高い静的特性と動的特性を同時達成する光変調器の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析設計ツールの経費は計画額より低減できており、出張旅費もコロナ拡大防止のための人的移動制限で削減された。さらに成果の国際会議や論文発表費は他研究財源からの支出もできたため、この額(直接経費200千円)が発生した。次年度(2022年度)に繰り越し、成果発表の費用として使用する予定である。
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