10Gbit/sを超える電気信号印加に対して、半導体レーザー素子とは異なり、出力光信号に波長チャーピングを生成しない優れた電気光学特性のLiNbO3を利用した光変調器が開発され、変調方式無依存性、低光損失性、低光雑音性などの高い信頼性を持っている。ただし、変調器の小型化に関しては、LiNbO3の微細加工が容易でないことから進展の停滞が見られたものの、最近では薄膜LiNbO3(スパッタ膜でなく結晶薄膜)の製作が可能となり、ドライエッチングで導波路型小型変調器が開発された。しかし、半導体微細加工と比較すると、LiNbO3の加工はエッチングレート、精度、軽原子(Li)拡散やコストの課題がある。そこで、技術確立された半導体微細加工でSiスロット導波路を形成し、不純物ドーピングした電極化を行い、この上にLiNbO3を接合したSiスロット導波路/LiNbO3融合光変調器を研究した。変調器の光閉じ込め効率、スロット電界強度分布、光変調効率の静的特性を解析評価し、電極化構成の違いで差異はあるものの、良好な特性を得た。ここで、ドープされたスロット電極で高電界が得られるため、従来と同性能を保持しつつ、変調器を短尺化できる。そのため、進行波電極(50Ω終端)が不要となり、低消費電力化が可能となる。ただし、スローライト効果をもたらすfin構造は光損失増大を生じたため、改良した平滑構造で所望の特性を得た。静的特性は良好であったものの、動的特性は光導波部分のドーピング量を調整する変調ドーピングで低光損失、低印加電圧、低抵抗性を保ちつつ、高周波動作を目指したが、性能十分とは言い難かった。変調帯域制限に関しては、電気光学係数の大きい他材料(BaTiO3)を導入することで改善した。また、スロットギャップでの高電界による絶縁破壊はギャップ内面の絶縁膜厚制御で防止し動的特性を保持した。
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