研究課題/領域番号 |
18K04298
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
井上 真澄 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00388141)
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研究分担者 |
崔 希燮 北見工業大学, 工学部, 助教 (70710028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 温水循環式エアヒーター / 給熱養生 / 強度発現 / 寒中コンクリート |
研究実績の概要 |
寒中施工におけるコンクリートの給熱養生は、構造体周囲に仮設の養生上屋を設置し、熱風機等によって内部空間を温度制御する方法が主流である。しかし、熱効率が低く、不要な燃焼ガスの発生に伴う労働環境の汚染やコンクリートの品質への悪影響が懸念されている。本研究は、従来型給熱養生方法の問題点を補完し、省エネ・効率化とコンクリートの品質確保を両立する新たな方策として“温水循環式エアヒーターを用いた省エネ型コンクリート給熱養生システム”の構築を目的とする。 今年度は、本システムの適用部材の一つとしてRC床版をターゲットとした。まず低温実験室において内部溶液温度、外部環境条件、断熱シートの被覆条件などをパラメータとした給熱養生実験を行い、RC床版模擬試験体の打設直後から給熱養生終了に至る温度分布履歴を計測した。また、給熱養生した同試験体の圧縮強度や水和生成物の量的変化等についても検討した。さらに、当初の計画を前倒しして、厳冬期に実大RC床版を対象とした給熱養生実験も行い、従来型給熱養生方式との比較検証を行った。 その結果、低温環境を再現した室内実験(-5℃と-10℃)においては、温水循環ホースをコンクリート表面に設置することで効果的な温度管理とともにコンクリートの良好な強度発現が得られた。また、水和生成物の生成量増加とともに硬化体組織の緻密化にも寄与しており、これによりコンクリートの強度が増進したものと考えられる。一方、日平均気温が-5℃を下回るような厳冬期の実環境下においても、温水循環ホースをコンクリート表面に設置して給熱養生することにより、コンクリートの良好な強度増進が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始前年度に模擬試験体による予備的な計測を実施したことを踏まえ、実験要因を精査できたことで室内実験については当初の計画通り実施することができた。加えて、RC床版を対象とした実大養生実験にも着手できたことから、全体として当初の計画以上に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度実施した実験結果を精査し、温度管理や強度発現以外の評価として、環境側面の優位性やコンクリートの耐久性に及ぼす影響を踏まえて本システムの優位性を明らかにする。 一方で、現時点では比較的部材厚が薄い床版部材を対象とした給熱養生に視点を置いているが、現場汎用性を考えた場合には、桁、梁、橋脚など様々な形態の構造物への適用が期待される。そこで厚みを有するコンクリート部材への本システムの適用方法として、型枠表面への温水循環ホースの設置や部材内に温水循環ホースを埋設する手法の検討に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会への参加を取りやめたため、次年度使用額が生じた。翌年度は初年度の研究成果を複数の学会にて発表する予定であり、その旅費に充てたいと考えている。
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