研究課題/領域番号 |
18K04300
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
河村 隆 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (50324231)
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研究分担者 |
梅崎 健夫 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (50193933)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 舗装工学 / 歩行者系舗装 / 土系舗装 / 積雪寒冷地 / X線CT / 凍結融解 / 凍結方向 / 温度分布 |
研究実績の概要 |
①表面(凍結面)から内部への凍結速度の定量評価,②表面から内部への凍害劣化進行の定量評価:土系舗装の円柱状供試体(高さ61 mm,直径73 mm)に対して,(a)供試体の全周面から凍結融解を行う場合と,(b)ペルチェ素子ユニット型凍結融解試験装置(申請備品)を用いて供試体の下面から凍結融解を行う場合の,2つの繰り返し凍結融解試験を実施した.まず,両試験において,供試体中心付近が凍結するまでの時間を同程度にするための温度条件の設定を行った.そして,供試体内部の変形およびクラックの発生状況について比較した.得られた主な知見は以下のとおりである. (a)全周面からの凍結融解:(1)供試体の中心付近では,下面から上面への一方向に凍結融解が生じる.(2)側方ひずみは,凍結融解サイクル10回程度まで増加して1%程度に達し,その後さらに増加する.(3)鉛直ひずみは,凍結融解サイクル10回程度まで徐々に増加し,その後5~8%程度で増減を繰り返す. (b)下面からの凍結融解:(1)側方ひずみは,(a)と同様に凍結融解サイクル10回程度まで増加して1%程度に達する.その後は,(a)と異なりモールドに拘束され1%程度でほぼ一定となる.(2)鉛直ひずみは,(a)と異なりサイクルに伴って増加を続ける.(3)サイクルが進むにつれて,供試体の中心付近に水平方向のクラックが発達する.クラックは融解時に元に戻らず,サイクルの進行ともに徐々に広がる.(4)供試体内部の側方ひずみは,供試体の外周付近の方が大きい.(5)供試体の中心付近では供試体下面からの凍結が支配的で凍結面が水平を保って徐々に上昇するが,外周付近では中心付近よりも凍結が速く進行し,凍結面が傾斜していると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルス感染症対策の影響により,当初の予定通り研究を進めることができなかったため,研究期間を延長した. ①表面(凍結面)から内部への凍結速度の定量評価,②表面から内部への凍害劣化進行の定量評価:ペルチェ素子ユニット型凍結融解試験装置(申請備品)を用いて供試体の下面から凍結融解を行う試験において,供試体内の温度分布の測定結果に基づいて,条件設定(凍結融解過程の温度と継続時間)を行った.供試体内のジルコニア製ビーズを測点として,測点の距離の変化に基づいて,内部ひずみを求める手法を確立した.アクリルモールドの拘束の影響により,供試体の中心付近と外周付近において凍結融解時の凍結速度とクラックの発生が異なることが明らかとなった.次年度において,供試体の寸法(縦横比)を変えた凍結融解試験を実施し,凍結速度の定量評価,表面から内部への凍害劣化進行の定量評価を行うこととした. ④凍害劣化に影響する細孔径分布の同定:予備試験において測定の実績があるため,次年度に適切な条件を選定して行うこととした.
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今後の研究の推進方策 |
①表面(凍結面)から内部への凍結速度の定量評価,②表面から内部への凍害劣化進行の定量評価,③凍害劣化と材料特性の関係:過去3年の実績から,供試体(初期直径73 mm)の初期高さをこれまでの60mmから30mmに小さくすることにより,供試体の中心付近と外周付近において凍結融解時の凍結速度とクラックの発生に大きな差が生じることを抑制する.供試体の高さを小さくすることにより,凍結融解時間が短くなるため,試験時間の短縮が期待できる.ペルチェ素子型一次元凍結融解試験装置を用いて,一次元凍結融解試験を実施する.X線CTスキャナによる撮影を,これまでと同じ各凍結・融解過程の終了時に加えて,凍結融解サイクルn=0,5,10,20の凍結過程において1時間間隔で実施し,凍結中の内部ひずみの増加とクラックの進展の定量化を行う.得られた結果に基づいて①~③について検討を行う. ④凍害劣化に影響する細孔径分布の同定:①~③の供試体の凍結融解試験前後の試料に対して,水銀ポロシメーターによる細孔径分布の測定を外注にて実施する.凍害劣化を生じる前後の細孔径分布を比較し,細孔径分布および全空隙体積の変化を求めることにより,④について検討する. ⑤凍害劣化現象およびその機構:①~③のクラックの進展と内部ひずみの定量化に関する検討結果と④の細孔径分布の範囲および全空隙体積に関する検討結果を関連づけることにより,⑤について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由) コロナウイルス感染症対策のために,当初の予定通り研究を進めることができなかったため,研究期間を延長し,次年度使用額が生じた. (使用計画) 次年度使用額(前年度の残金)は,細孔径分布を測定するためのポロシメーター試験(外注),消耗品費,論文投稿料として使用する計画である.
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