研究課題/領域番号 |
18K04301
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐藤 良一 広島大学, 工学研究科, 名誉教授 (20016702)
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研究分担者 |
半井 健一郎 広島大学, 工学研究科, 教授 (10359656)
小川 由布子 広島大学, 工学研究科, 助教 (30624564)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不同沈下 / 連続鉄筋コンクリート舗装版 / クリープモデル / 接地・剥離 / せん断伝達 / 応力履歴 |
研究実績の概要 |
盛土などでは不同沈下が生じるため、コンクリート舗装は一般に適さないとされている。それは版下面に空洞が生じ輪荷重応力を高めるだけでなく、自重応力も無視できなくなるためである。不同沈下の影響を適切に評価するためには自重による版のクリープ変形、および版と路盤の接地・剥離の判定条件とそれに応じた空洞の剛性モデルの確立が不可欠となる。 これまでの研究で、自重応力に対する有効ヤング係数に基づくクリープの影響、接地・剥離の判定について矛盾のない結果が得られたが、自重作用の後に順次作用するとしたクリープの影響、版上下面の温度差、輪荷重による履歴応力の解析に繋がらなかった。 そこで、本年度はクリープの影響を時刻歴で評価できる3要素Voigtモデルを3D-FEMに取り入れた手法の開発を行い、自重、クリープ、温度差、輪荷重のそれぞれが順次作用する場合の版下縁の履歴応力の解析を行った。これにより、接地前の版のたわみ増加、接地後の自重応力の緩和の解析が可能となった。 解析対象は幅員3.85m、版厚300㎜の連続鉄筋コンクリート(CRC)舗装とした。空洞は幅員方向に円弧に従い設定し、最大深さ0.5㎜とした。版のクリープ係数は、土木学会標準示方書「設計編」に従って定めた。ひび割れ部のせん断伝達はせん断ひずみが所定の値に(段差量/ひび割れ幅)達した時に開始するとし、伝達開始後のせん断剛性は一定とした。 以上から、本年度の研究実績は「自重、クリープ、温度差、輪荷重が順次作用する場合の版下縁の応力履歴の解析法の枠組みを構築し、解析例を示した」とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不同沈下による版下面に空洞を有するCRC版と路盤との接触・剥離の判定を行いつつ、横ひび割れ部のせん断伝達モデルを取り入れた3D-FEMに、自重による時間依存性たわみの進行および接地後の自重応力の緩和を表現するための3要素Voigtモデルを組み込み、自重、クリープ、版上下面の温度差、輪荷重のそれぞれが順次作用する場合の版下縁応力の時刻歴解析ができることを確認した。この解析結果は、想定した挙動と矛盾のないものであった。 一方、定量評価にはひび割れ部の骨材の噛合せ(せん断伝達)開始条件、噛合せ後のせん断剛性等の合理的な設定が不可欠である。これらについてはCRCを想定した室内せん断実験、供用中のCRC舗装版のFWDに基づく検討があるが、整合性のある結論には至らなかった。 本研究の最終の目標は、上記の解析に基づいて、版厚の設計法を提案することである。版厚設計には疲労曲線が不可欠であるが、研究代表者らは版厚効果を考慮した疲労曲線を提案し、その妥当性を国道で調査された不同沈下のない無筋コンクリート(NC)版のひび割れ発生確率と比較して示している。 版の寿命は応力比とそれに対する疲労曲線から求まる疲労度により評価されるが、輪荷重の大きさ、版上下面の温度差、走行位置それらの走行頻度の組み合わせ数だけの解析が必要となり、解析は膨大な数となる。NC版の場合は疲労度の検討位置が自由縁部とされているが、CRC舗装の場合は疲労度が最大となる走行位置の検討も必要となる。一つの版の構造解析に数時間程度要するため、疲労解析の簡易化が今後の課題となった。 以上のように、ひび割れ部のせん断伝達に関わる入力値、疲労度評価の簡素化が課題として残ったものの、版下縁応力の時刻歴解析が可能となっていることから「概ね順調」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
国道9号北条バイパスのCRC舗装版のFWDによる横ひび割れ部の段差の調査、また研究代表者らが行ったはり状のCRC供試体の一面せん断実験で得られたせん断応力―せん断ひずみ(段差量/ひび割れ幅)関係に基づき骨材の噛合せ開始せん断ひずみとせん断剛性を検討する。CRC供試体のせん断実験では、載荷前からのせん断ずれ変位とひび割れ幅を測定し、横ひび割れ幅を0.2および0.3mmに制御している。この実験で得られたせん断伝達開始せん断ひずみと国道9号での実測値を比較し、両者の整合性を検討する。また、版応力に影響を及ぼすせん断伝達開始せん断ひずみとせん断剛性のパラメータスタディを行って、それらの妥当な値を検討する。 疲労寿命の検討では、上記NC版ですべての輪荷重の大きさ(13水準)と版上下面の温度差(15水準)を組み合わせて版厚と疲労度の関係を求めているので、これを基準に簡略化を検討する。例えば、上位輪荷重6水準、版上下面温度差5水準とした場合の疲労度は全水準を検討した場合の93%となり全水準とかなり近いので、これを参考に疲労度の簡易評価法を検討する。 CRC舗装の場合、輪荷重、温度差に加えて走行位置の要因が加わる。走行位置の分布は、最大走行車輪位置と車線幅、走行位置の標準偏差と路肩幅の関係から求めることができる。一方、上記の構造解析から横断方向の引張応力分布を求めることができ、最大応力位置を最大疲労度位置と仮定すれば、疲労計算が上記NCと同程度に簡略化される。この場合、温度差応力の最大位置と輪荷重応力の最大位置は異なるので、両者を加算した合成応力の最大位置が輪荷重と温度差の大きさにどの程度影響されるかを明らかにし、より合理的な疲労度の照査位置を検討する。 以上のせん断伝達モデル、疲労度の簡易計算法等について、合理性や問題点を明らかにし、今後の方策とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の3月に予定していた東京および広島での研究分担者や研究協力者との打ち合わせができなくなり、旅費、宿泊費等が消化できなかったため。 2019年度の未消化額は、2019年度に予定した打合せを2020年度に行う費用に充当する。、
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