研究課題/領域番号 |
18K04303
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉武 勇 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (10335771)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コンクリート / 混和材 / 耐久性 / 疲労 |
研究実績の概要 |
社会基盤構造物の長期耐久性を実現するためには,これを構成する鋼やコンクリートの材料レベルの耐久性向上のみならず,これらを組み合わせて構築された構造・部材レベルにおいて,様々な環境劣化因子や作用する荷重に対して長期耐久性を確保していく必要がある.これまでコンクリートのフレッシュ性状・硬化特性の改善のみならず,コンクリート材料の長期耐久性の向上を目的として,フライアッシュや高炉スラグ微粉末,シリカフュームなどをセメントの一部代替材として混和したコンクリートに関する研究が,国内外で盛んに行われてきた.これらの混和材を活用したコンクリートの材料レベルにおける耐久性には,数多くの知見が得られているが,これを構造部材に適用した際に,各種環境劣化作用を受けながら,さらに交通荷重等の各種構造作用を繰返し受ける場合の長期的耐久性(主に疲労)については,未だ検討の余地がある.混和材はコンクリートの組織構造を緻密化させ,劣化因子(水・塩分等)の侵入を防ぐことが期待されている.しかし,各種混和材を用いたコンクリートと微細構造の関係性を検証し,疲労耐久性を評価した研究がほとんど行われていない.2020年度の研究において,湿潤下および凍結融解作用下にあったRCはり部材の疲労強度が著しく低下する結果がみられた.これはフライアッシュなどの混和材を含むRCはりで特に顕著な傾向がみられた.これは実質的な水セメント比が高くなったことが一因と考えられた.そこで2021年度の研究では,比較用の実験として,水セメント比が著しく高いRCはりを準備し,その細孔径分布と乾燥・湿潤下における曲げ疲労耐久性を調べた.さらに水分浸透を抑制するため,はっ水効果を有する表面含浸材を塗布して曲げ疲労強度の向上を図った.その結果,曲げ疲労強度は乾燥下に比べて湿潤下において低下する傾向はみられるが,高い水セメント比のRCはりでは影響は小さいものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた学会発表が,新型コロナのためキャンセル・延期になったため
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今後の研究の推進方策 |
フライアッシュなどの一部の混和材を用いたRCはりの曲げ疲労実験において,著しく疲労強度が低下する現象がみられた.これは既往の研究で報告されている知見とは異なる傾向であった.その一因として,実質的に著しく高い水セメント比で製作したRCはりのため,高い応力作用下で疲労強度が低下した可能性が考えられた.その検証のため,混和材を用いない比較用のRCはりを製作して曲げ疲労強度試験を行ったが,同様に著しく低い疲労強度が観察された.再確認のため,2022年度は普通強度レベルのRCはりの曲げ疲労試験を追加して,研究を完遂させる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた国際会議での学会発表が,新型コロナにより渡航困難となり,また学会そのものも延期となった.比較用として検討した混和材を用いない低強度コンクリートについて研究成果もまとまってきたことから,あらためて2022年11月に開催される国際会議において研究成果を発表する予定である.さらに比較用として,2022年度は普通強度レベルのRCはりの実験を追加して,研究をまとめて行く予定である.
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