社会インフラの長期耐久性を実現するためには,鋼やコンクリートの耐久性向上のみならず,これらを組み合わせて構築された構造・部材レベルにおいて,様々な環境劣化因子や作用する荷重に対して長期耐久性を確保しなければならない.これまで耐久性の向上を目的として,フライアッシュや高炉スラグ微粉末,シリカフュームなどをセメントの一部代替材として混和したコンクリートの耐久性評価が行われてきた.これらの混和材を活用したコンクリートの材料レベルにおける耐久性には,数多くの知見が得られているが,これを構造部材に適用した際に,各種環境劣化作用を受けながら,さらに交通荷重等の各種構造作用を繰返し受ける場合の長期的耐久性(主に疲労)については,未だ検討の余地がある.混和材はコンクリートの組織構造を緻密化させ,劣化因子(水・塩分等)の侵入を防ぐことが期待されている.しかし,各種混和材を用いたコンクリートと微細構造の関係性を検証し,疲労耐久性を評価した研究がほとんど行われていない.2020年度の研究において,湿潤下および凍結融解作用下にあったRCはり部材の疲労強度が著しく低下する結果がみられた.これは実質的な水セメント比が高くなったフライアッシュなどの混和材を含むRCはりで特に顕著な傾向がみられた.そこで2021年度の研究では,比較用の実験として,水セメント比が著しく高いRCはりを準備し,その細孔径分布と乾燥・湿潤下における曲げ疲労耐久性を調べた.さらに水分浸透を抑制するため,はっ水効果を有する表面含浸材を塗布して曲げ疲労強度の向上を図った.その結果,曲げ疲労強度は乾燥下に比べて湿潤下において低下する傾向はみられたが,高い水セメント比のRCはりでは影響は小さいものであった.これらの追加実験として2022年度においては,各健全度区分を模した標準強度および低強度のRCはりを作製し,曲げ性状に及ぼす影響を調べた.
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