研究課題/領域番号 |
18K04305
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
奥松 俊博 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (30346928)
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研究分担者 |
森田 千尋 宮崎大学, 工学部, 教授 (60230124)
松田 浩 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20157324)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 橋梁維持管理 / i-construction / GNSS / UAV / 支承装置 / 日射および温度変化 / MEMS |
研究実績の概要 |
社会インフラの観測体制の構築,橋梁支承部など局所的かつ狭隘な部分の外観や機能劣化状態の早期把握は,構造物の長寿命化や安全供用に直結する。本研究では,橋梁の動きに影響を与える温度変化など環境要因の究明,またそれに伴い発生すると考えられる桁端部周辺の応力集中や支承自体の機能不全など環境変動によって生じる構造力学に関する問題を対象とし,光学カメラや熱赤外カメラなど遠隔検査技術の利活用,またプラットフォームであるUAVの飛行時の安全性確保に関する検討また検証を行うものである。 前年度までの実績を踏まえ,本年度は,以下の項目を実施した。 (1)日射-橋体温度の観測および分析:橋梁維持管理に拡張する場合,架設周辺環境による影響が大きいことから,部材劣化や健全度診断あるいは劣化要因の究明のためには,より詳細な環境情報が得られることが望ましい。半面,計測対象の高密度化は,コストや効率性の面から困難が伴う。観測データを用いた日射-温度の相関分析および観測結果から構成したモデル化を行うとともに,橋梁幾何・位置情報また軌道情報等を統合することで,橋梁の温度推定の一般化を試みた。 (2)小型カメラによる支承機能の可視化:小型カメラと画像処理による支承立体情報の抽出より,実橋の支承装置の観測を行った。3D画像データをもとに,仮想計測器ソフトウェアによる画像解析により,温度変化に伴う桁伸縮,また支承装置の機能可視化の確認に適用した。本研究の目的とする狭隘空間にある支承およびその機能の評価が可能であることを確認した。 (3)インフラ維持管理のためのUAV飛行の位置報管理およびルーテイング:想定橋梁のUAVによる維持管理点検の際に生じうる安全性低下について,GNSS情報軌道情報および橋梁点検時の障害となりうる地物幾何情報を内挿したソフトウェアの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)日射-橋体温度の相関分析: 日射と温度変化の相関関係の検証を目的とし,学内実験フィールドと実橋で日射量の長期観測を行った。観測データを用いた日射-温度の相関分析および観測結果から構成したモデル化を行うとともに,橋梁幾何・位置情報また軌道情報等を統合することで,橋梁の温度推定の一般化を試みた。その結果,本研究の目的のひとつである,橋梁の変状の発生メカニズムを計測および数値シミュレーションにより示すことができた。ただし,当初予定していた年度前半からの観測が,コロナ禍による観測上の制約により,年度後半からの観測開始と半年程度の遅延が生じることとなったため,現象の把握・解明に必要な一年を通したデータの蓄積に至っていないのが現状である。 (2)小型カメラによる支承機能の可視化: 前年度に引き続き,小型カメラによる支承構造および機能の可視化のための計測およびソフトウェアの開発を行った。別途実施している温度,支承変位情報を統合して,支承機能が正常であるかをおおよそ認識できることを確認した。本項目については当初の目的をおおむね達成したと考えている。 (3)UAV飛行のルーテイング検討: GNSS情報軌道情報および地物幾何情報を内挿したソフトウェア,さらに研究分担者が有する構造物モデリングと3D計測技術などのSfM技術の知見を本研究に適用することで,橋梁点検時のUAV飛行不安定性などのシミュレーションに適用できる情報基盤の試作を行った。なお本年度予定していた実橋梁での運用については,上記項目(1)と同様,コロナ禍による観測上の制約により,検証を行えていないため,模擬ケースに対する数値解析的な検討にとどまっている。橋梁変状のセンシングを目的とするMEMSセンシング装置の開発と検証についても,上記理由により,実橋梁での検証に至っていないが,そのプロトタイプによる試計測については実施済である。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように,コロナ禍による制約を受け,研究の一部が完結または遂行できていない状況であるため,補助事業期間延長の申請を行い,承認を受けた。次年度は,本年度実施できなかった実橋における環境データ(日射量および温度)やそれに伴って生じる橋体変状データ(桁および支承変位)の蓄積を行うとともに,移動体(UAV)からの遠隔診断を実現するためのシステムの運用を行う予定である。ただし,コロナ禍の影響が継続拡大している現況を鑑みて,実構造物での運用および計測ができない場合を想定し,研究分担者との共同により,代替できるシミュレーションを強化するなど,当初の計画を達成するための研究方法の転換についても検討を行う予定である。延長により最終年度となる次年度は,過去3年間の研究実績をもとに,研究全体を総括し,成果を取り纏める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究実施計画が,コロナ禍により、橋梁計測およびシミュレーション実施などの一部が年度内に未達となることが予想されたため、研究機関の延長申請を行い、これが承認された。次年度使用額については、上記の未達項目(主として橋梁計測および数値計算)を達成するために必要な経費として次年度に使用する予定である。
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