研究課題/領域番号 |
18K04306
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田中 茂 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 助教 (70505859)
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研究分担者 |
山口 信 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (80570746)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニトロメタン / 金属細線爆発 / 爆燃 / 高速度ビデオカメラ / 数値解析 / 動的破壊 |
研究実績の概要 |
従来の放電破砕工法では、複数のニトロメタン(NM)装薬を破壊対象物内に配置し、それらを大電流によって起爆している。それぞれのNM装薬には数10 マイクロ秒の起爆時差があり、装薬孔から無秩序に亀裂が発生する。本研究は、「都心部の構造物の解体」や「災害により崩壊した構造物からの被災者救出ルートの作成」への応用を最終的な目標としている。各装薬の起爆時差を無くすと、装薬孔から発生する応力波の干渉によって、装薬孔間に破断面が形成されやすい条件になる。本年度は、起爆時差と破断面の制御を目的として、光学観察実験、モデル実験及び数値解析を実施した。更に、装置の小型化を見据えて、金属線をタングステンから軽金属に変更し爆燃状況の調査も実施した。 高速度ビデオカメラを用いた光学観察実験では、ビニールホース、NM、金属細線から成る装薬ホルダー二つの起爆状況が、金属線に投入する電気エネルギーを条件として調査された。金属細線が蒸発する条件では、1マイクロ秒以下の起爆時差でNMの爆燃反応の開始が確認された。光学観察実験と同じ電気エネルギー条件において実施されたモデル実験では、コンクリート供試体(500×500×80 mm)の装薬孔間に破断面が形成された。数値解析では、ひずみ速度を考慮した数値解析モデルを用いて、モデル実験で得られた最終破壊形状と一致する解析結果がえられ、応力波の干渉と亀裂の発生及び進展過程を明らかにした。 より低い電気エネルギーで蒸発する軽金属線を用いて、同様の観察実験を行ったところ、蒸発した金属元素がNM中の酸素と反応し、その反応熱が爆燃反応のきっかけになっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
光学観察実験とモデル実験により、複数のニトロメタン装薬の同時起爆を達成し、コンクリート供試体の破断面制御を実証している。更に、数値解析によって破壊のメカニズムまで明らかにしている。従来技術に適用されているタングステンから軽金属に金属細線を変更することにより、省電力化の可能性が示されていることから、実用を目指した装置の小型化を達成するための課題が明確にされている。
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今後の研究の推進方策 |
従来の放電破砕工法では、NMの加熱のためにタングステン線が使用されている。タングステン線を軽金属線に変更し予備的光学観察実験を行ったところ、蒸発した軽金属元素がNM中の酸素と反応し、その反応熱がNMの爆燃反応を強力にサポートしていることが明らかになった。災害救助現場へのアクセスを容易にするためには、装置の小型化が必要であり、最終年度は、NMの爆燃反応を開始するためのエネルギー閾値を実験的に明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初レンタル導入を計画していた単一波長レーザー光源を用いた爆燃反応の光学的観察実験については、その現象が想定したものとよりも速く、光源を含めた他の光学系実験装置では可視化困難であることが判明した。レーザー光源に充てる経費は、電圧計測の精度向上のために高電圧プローブの導入と成果論文のオープンアクセス費用に充てる。
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